狂犬の花嫁【今日から俺は】

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「ほら、寝るぞ」


いつものように手招きして

ベッドに促す相良さん



私を気遣うように見やる瞳も

私を陥落させるためだと思うと

以前のような 暖かさは感じない






別に恨んでいる訳じゃない

悲しかったのも一瞬で どちらかと言えば納得したのだ


汚れた道具の私を


本当の意味で大事に思う人など居ない



事実を突き付けられただけ




前と違っているのは




それを悲しいと思ってしまう

無駄な感情を持った 馬鹿な自分





相良さんに触れる度、汚い自分ごときが側に寄ることすら憚られて

出来るだけ接触を避けるよう心がけた




でも




これから私はもっと最低なことをする




例え道具としてでも

優しく接してくださった相良さんに

このような仕打ちなどしたくない




まだ 割りきれるのは

これが当社のみでなく、相良さんの会社にも利益になるのだということ

ひいては相良さんにとっても

有益であるということ






ぎゅっと唇を噛み締めて


そっとベッドに身体を忍ばせる





どうか、今からすることを


許して






いつものように 私に腕枕をするために横向きになっている相良さんの身体を

そっと手を添え 仰向けた




横に座り ゆっくりと服を寛げていく




正直




顔は見たくない





「A」


呼ばれて思わず見返した顔には

険しさが滲む




ごめんなさい 相良さん




お父様に逆らえない私を



許して






「相良さん、お願いです。どうか………

　……………………私を 抱いてください」



相良さんの眉間に 深く皺が刻まれる



「お前、本気で言ってんのか」


「はい」




こんなことを相良さんに頼まなくてはならないなんて

消えてなくなってしまいたい




「本当は何かあったんじゃねえのか」


「何もありません」




今回ばかりは 泣くわけにはいかない

ぐっと歯を噛み締める




「お前の意思で言ってんのかよ」


「私の意思です」





はぁ……とひとつため息をついた相良さんが


強い瞳で私を見据えた





「わかった。いいぜ？……俺だってなぁ、お前ぇが欲しい」



腕を掴まれて 横たえられる



「大事なんて言葉で煙に巻いてきたが」



相良さんの大きな手が 私の頬を優しく撫でる




「俺は、お前ぇが」





好きだ という言葉と共に

唇が寄せられた




嘘で紡がれたその言葉は


私には、辛すぎる…………






暗く狭い部屋に 響く嬌声





私は




いったい何をしているのだろう

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