狂犬の花嫁【今日から俺は】

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おかしい


職場だけじゃねえ



家もだ






研究室を出てすぐに


「違うぞ」


の声



見えてる見えてる


お前ぇのでかい図体は

そんなちっせえ看板からは はみ出んだよ…………




サトシが俺を嵌める気じゃねえことはわかったが

何企んでるかわからねえアホ社長の手前

仲違いしてる体にしとくかどうか
どちらが有利にことが運ぶか今の段階では結論が出ねえ



特には思い付かねえが この状況は何かに使えるかもしれねえし



なにより和解するにしても

どこでアホや東三条の息がかかったやつが居るかも分からない

これじゃあ 話している時間も場所もねえ





今日で通算8回目の「違うぞ」

回を追う毎に 若干声がぐずぐずしてきた気もするが


気のせいだ



一も二もなく サトシを無視した









そんなことより 最重要案件はAのことだ



昨日はアホみたいな徒労で疲れたからなァ


家に癒しを求めるのは当然のことだろ





Aはどんな風に迎えてくれるか 正直俺はすこぶる楽しみにしてたんだよ




何がどうしてそうなったかは知らねえが

Aは居酒屋デートから 触れられるだけでも恥ずかしくなって照れまくっちまう感じだったからな


それが自分から触れるとなった日には


どんなかわいい姿を見せてくれるかと思ってよォ…………





俺の予想の斜め下を行く反応に




心配やら がっかりやら 落胆やら…………



それこそ

何がどうしてそうなったんだ







今日は戻っててくれねえかな



インターホンを押してドアを開ける



憂いを含んだ笑みを浮かべるAに

俺は心でため息をついた




「相良さん、おかえりなさい」



これじゃあ前より悪くなってんじゃねえか

うっすら浮かべる笑みは


自分の立場に抗う気力すら無くしたようで




形だけのハグも


触れるか触れないかのキスも


まるで俺を




拒絶してるようだな






ようやくお前の心が見えてきた


その矢先に



…………これは きついぜ








「なあ、昨日からよォ……、何かあったのか」



夕食後のハグの時間

特に拒否なく抱き寄せられているものの

極力 体をくつけないようにしているA




「…………特にはなにも」



そんなわけねえだろと思いながら

多少強引に体を引き寄せた



「昨日は休みだったんだよな。何してたんだ？」


「何も、していません」



自分からは触れてこねえクセに 嫌がる素振りはみせねえA


この状況は何だ…………

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