ひみつな恋 ⑥ (ページ27)

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「先生っ。今日から渚をどうかよろしくお願いします。」

「西山Aと申します。こちらこそよろしくお願いします。」

「ほら、渚！今日からお世話になるんだから、ちゃんと先生に挨拶しなさい。」

「渚さん、初めまして。今日から宜しくね？」

聞こえているはずのお母さんの言葉を無視して、渚さんは挨拶することなく2階の自室へ行ってしまった。

「すみません、先生。あのコったら反抗期で、私の言うことなんて全然聞かないんです。高校だけは出て欲しいので、どうかお願いします。」

「力になれるよう、精一杯やらせていただきます。」

私は案内された2階の渚さんの部屋をノックしてから中へと入った。

「今日から渚さんの勉強を教えることになった、西山Aです。これから受験までよろしくね？」

中学3年生で反抗期真っ只中だという渚さんは、机に向かって座りながら携帯を弄っていた。

「今日は渚さんがどのくらいできるか知りたいから、このプリントをやってもらってもいいかな？」

そう聞くと、携帯から目を逸らすことなく渚さんは私を呼んだ。

「ねえ。」

「はい、なに？」

「なんで家庭教師やろうと思ったの？」

「えっ……？」

「どうせ、こんな生徒に当たって面倒だと思ってるんでしょ。家庭教師だって、時給がいいから選んだんじゃないの？」

私に対して嫌悪感を持っていて全く心を開いてくれない渚さんを見ていると、今はまだ勉強を教える時ではないのかなぁと感じた。

「私、面倒なんて思ってないよ？どんな生徒さんでも力になれたらいいなって本当に思ってるから。」

「嘘ばっかり。だから大人は嫌なんだよ。」

「本当だよ？でも、家庭教師を始めたのは渚さんの言う通り、他よりも時給が良かったからだよ。ふふっ。」

照れながらも正直に話すと、渚さんは初めて私と視線を合わすと目を見開いた。

「ふふっ。私ね、お金貯めたいからこのお仕事始めたの。大学卒業したら一人暮らししたくて。渚さんはやりたいこととか、夢はある？」

「別に……。」

「そっか。やりたいことや夢があると、毎日がもっと楽しくなるよ。これから色んなことを知っていって、その中から見つかるといいね。」

「てゆーかさ、こんな話してて勉強教えなくていい訳？時間なくなるけど。」

なかなか勉強を始めず無駄なおしゃべりばかりしている私に、渚さんは呆れ気味だ。