ひみつな恋 ⑥ (ページ28)

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「あっ、もしかして勉強したくなった？」

「はあ？なる訳ないじゃん。勉強なんて大嫌いだし。」

「でしょ？だから今日はお互いのことを知る時間にしようかなぁって思って。」

「はあ？」

勉強を教える前に、先ずは渚さんと仲良くなることから始めようと思った。

バイト先の先輩から聞いた話では、渚さんの担当は私で3人目らしい。

渚さんの態度に腹を立てたり、困り果てて泣いて担当を降りて行ったと聞いていた私は、無理に勉強をやらせるのではなく、学ぶ環境が整ってからにしようと考えた。

先ずは私を知ってもらって、渚さんのことも教えてもらって、先生と生徒ではなく、お友だちになっちゃおう作戦で行くことにした。

「渚さんは、大人とか先生っていう存在が好きじゃないみたいだから、私のことは先生と思わなくていいよ？」

「は？何言ってんの？」

「お友だちと思ってくれて、いいよ？」

「マジで変わってる……。」

「ふふっ、そうかなぁ？」

そう言うと渚さんは呆れたような表情をしながらも、僅かに笑ってくれた気がした。

「仕方ないから、友だちになってあげてもいいけど……」

「え、ほんとぉ？よかったぁ。私のことは好きに呼んでくれていいよっ。」

「じゃあ、全然先生らしくないし、Aね。」

「いいよっ。よろしくね、渚さん。」

「友だちなのに、渚さん呼びってどうなの？」

「え、ダメだった？」

「渚でいいし……。」

照れくさそうに視線を逸らしながら言う渚さんに、私は目を見て伝えた。

「じゃあ……渚くんねっ！」

くん付けで名前を呼ぶと、今までとは違う子どもらしい笑顔を見せてくれて、それだけで私の心は晴れやかな気持ちになった。

「渚くん。次会った時は、今日見せたプリントの勉強しようね？」

「別にいいよ。」

「うん、約束ね。じゃあ時間だから、今日はここまでね。」

「なぁ、A。連絡先教えてよ。俺ら友だちなんでしょ？」

「そっか、いいよ。なにか困ったこととか、勉強でわからないことがあったら聞いてね。」

渚くんとメッセージアプリのIDを交換して、今日の授業はお終いとなった。