お見舞い -T- ページ31
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今日は俺がハマっている
一口ドーナツとカフェラテを
お土産にお見舞いに行く。
甘いものが食べられないと泣き出すAに
食事制限がなくて本当によかった。
「Aー…
今日はドーナツ買ってきたよん」
「裕太！無事だった！？
ここに来るまでに
甘い誘惑に負けなかった？」
「…うん？
ドーナツには負けたけど」
「その甘い誘惑じゃない！
今、この病院の女子たちは
裕太の話題でいっぱいなんだから、
イケメンがお見舞いにきてるって」
「そーゆー話ね、
ほら、出来たてだから早く食べよ？」
「私、入院してから少し太った…
このままぶくぶく太って
裕太に捨てられたら嫌だ…」
「Aは少し太った方がよかったんだよ、
それに太ったって嫌いになったりしないよ？」
Aはまだ納得しないのか
下を向いたままだった。
俺はカフェラテにストローを差すと、
Aの口元に持っていく。
「ほら、甘くしてもらったよ？
はい、ちゅーちゅーして？」
Aは少し俺を見ると
可愛くストローをくわえると、
おいしいと小さい声でつぶやいた。
カフェラテをテーブルに置いて、
ドーナツを食べる俺を
Aがじっと見つめてる。
「…かっこいい」
「それはどーも」
「看護婦さんも隣のおばさんも
売店のお姉さんも
裕太がかっこいい！かっこいい！
って言ってるんだよ？
私が入院してる間に誰かに
盗られちゃったらどうしよう…」
この上ないくらい真剣に
悩んでいるAの口元に
ドーナツを持っていくと
反射的にそれに食いついた。
餌付けされるひな鳥みたいで可愛い。
「俺がAの入院中に
浮気するようなやつだと思ってるの？
悲しいなー
そんな風に思われてるなんて悲しいなー
泣いちゃう！俺、泣いちゃう！」
「そーゆーつもりじゃないけど…！
裕太がかっこよくてモテるから不安になるの」
もう一つドーナツを目の前に差し出すと
Aは何の迷いもなくまた食べた。
「俺、ひな鳥に夢中だからさ、
それどころじゃないんだよ」
俺の言葉に首をかしげたAにキスをした。
ドーナツの砂糖の甘い味がした。
-Fin-
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作者名：あおい | 作成日時：2020年6月10日 16時
