oblivion-忘却-10/N ページ33
「5人の中で貴方だけですものね、人の心に関する能力者は。
貴方は仲間の中でも異端だわ。
きっと貴方に恐怖を覚え嫌悪する人間だっているはず。」
「うるさい!!うるさい!!!」
・・・・潤君の心に自分に対する恐怖が芽生えていくのを思い出す。
「もう、元には戻れないんですよ。
覚醒する前にはね。
どうしますか?
仲間にもその力を知られた今、直接心を読みます?
そうすれば、自分がどう思われてるか判りますよ?
まぁ多分、伝わってくるのは貴方に対する嫌悪感だけかと思いますが。」
「それ以上言うな!!!」
さっきのみんなとの距離感を思い出す。
強烈な孤独感に苛まれた自分を思い出した。
「あぁ、ごめんなさい。
そんなこと出来ませんでした。
だって皆さん、貴方をここに置いて帰られましたもん。」
「・・・・・えっ?」
「もちろん、貴方と行動を共にしていた大野さんも。」
その言葉に体が震えた。
「う・・・嘘・・・。」
涙が滲んで、漏れるのは女々しい自分の声だけで、彼女はオレの隣に腰掛けて優しく笑う。
「本当です。
仕方ないですよ。
人は誰だって見せたくない部分があるのに、貴方の前では丸裸にされてしまうんですもの。
それに貴方が見せる思考に入り込む能力は、見てるものに恐怖を与えます。
いくらなんでも、傍にいるのが嫌になったんじゃないですか?」
頭を抱えうずくまるオレに囁くような女の声が聞こえる。
「可哀想な二宮さん・・・。
この世界で一人ぼっちですよ?
貴方の味方は誰もいないんです。」
その言葉に涙が頬を伝っていく。
「でも私は貴方の味方です。
ここで・・・私に協力してくれるなら私は貴方の味方になります。
この世界でただ一人の味方に。」
「私なんですよ。
貴方が能力者だって最初に気がついたのは。
だから私に協力して。
そうしてくれるなら、私はずっと味方でいます。」
・・・力なくぼんやりと見つめるオレの手を、彼女はそっと握りしめる。
「私達、お互いに協力しましょうね。
もし私の力になってくれるなら、貴方に嵐の仲間を取り戻させてあげる。」
「あ・・・なんでも・・する。
なんでもするから・・・!
お願い、オレにみんなを取り戻させて!!」
そう言って縋ったオレに、鏑木は妖艶に微笑んだ。
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作者名:あさり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/a-ground/
作成日時:2012年4月11日 0時