oblivion-忘却-4/O ページ27
医療用カプセルから出て俺はすぐに胸元の傷を見た。
高濃度の酸素に満たされたカプセルに横たわり、5分ほどそこに入っていると、傷は塞がりなんとか見える程度の痕がうっすらと残ってるだけまで回復していた。
「凄いでしょ?ソレ。
どういう構造になってるかは企業秘密で言えないんだけどさ、よく出来てんだよ。
開発費も高いからそんなに台数もないんだよねぇ。」
喉を鳴らして愉快そうに小城は笑う。
「大野君、お疲れ様。
もうお仲間のとこに行っていいよ?」
そう言われて小城の部下であろう男達に、俺はみんなの待つ部屋へと案内された。
・
・
「智君!!!」
「リーダー!!!」
「リーダー、大丈夫なのかよ?」
「ホラ、見てみ?」
「うわぁ、スゲェ!!!
本当に怪我が治ってる!!!」
相葉ちゃんが驚きの声を発する。
自動ドアの扉が開いて部屋に入ると、案の定ニノはみんなの輪から外れて座っていた。
みんなと少しだけ談笑した後、俺はふうっと溜息をついてニノの隣に腰掛けた。
「どうしたの?ニノ。
こんなとこに一人で座っちゃって。」
「一人の方が落ち着く。」
うそぶいたニノに、俺は笑って答える。
「嘘つき。」
「別に嘘じゃないし。
大野さんもみんなのとこ行けば?」
「俺はここがいいの。」
そう答えた俺に、ニノからやっと笑いが漏れた。
「ニノ・・・・、何かあった?」
俺の問いにニノは答えず、苦笑して俺に言葉を紡ぐ。
「さっきさ、大野さんを案内した連中・・・。
オレのこと『化け物』だって。
ハハ・・!だよね。
人の思考にまで入れちゃうんだもん。
普通の人間からしたら、オレ化け物だよね。」
可笑しそうに笑いだしたニノ手を、俺は躊躇することなくぎゅっと握りしめた。
「大野さん?」
そんな俺を、ニノは不思議そうに見つめる。
「聞こえちゃったの?
さっきの奴らの心の『声』が・・・・」
.
「・・・・・・・。」
俺の言葉に沈鬱な表情を浮かべたニノは、何も言わずに俯いた。
「俺と触れ合ってれば、ニノは心の声が聞こえてこなくなるんでしょ?」
「・・・・・・うん。」
「だったら、手繋いでるから。
頼むからうそぶいて平気なフリするなよ。
『化け物』なんて聞いて、傷つかない人なんていないでしょ?」
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作者名:あさり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/a-ground/
作成日時:2012年4月11日 0時