entertainment-余興-19/J ページ19
キメラと呼ばれる化け物は、俺を視界に捉えたままボタボタと涎を床に落していく。
ジィっと俺を見つめたまま、微動だにしない。
野生動物が見せる捕食の瞬間だ。
草むらに隠れ、襲い掛かる次の瞬間の為に集中力を極限にまで高めているんだ。
キリキリと締めあげられるような緊張感の中、キメラの低い呻り声だけが辺りに響いていた。
俺の右手が微かに動いたのを眼で捉えると、キメラは体をばねのように弾ませて俺に襲い掛かった。
「早い!!!!」
いくら人が持っていない能力はあるとはいえ、
獣の動きに人はついていけない。
跳躍したキメラを
俺は完全に見失った。
「潤君、上だよ。」
キメラを見失った俺に、ニノの冷静な声が降り注いだ。
その声を頼りに、俺はそのまま後ろへと退く。
退いた俺とニノは背中合わせで立っていた。
攻撃をかわされ、今一歩で俺を捕食できなかったキメラは忌々しそうに鼻の頭に皺を寄せ、低いうなり声をあげている。
そんな俺達を、リーダーは必死な顔で見つめていた。
「なんだよ、ニノ。
リーダー、ほっといていいのかよ。」
「あの人、怪我人だからね。
あそこで大人しく見てるように、言い聞かせてきたよ。
・・・・潤君、どんな能力を持ってるか知らないけど、オレがフォローする。
オレの言う通りに動いて。」
「なんだよ、ソレ。
和、お前・・・・・・・。
一体どんな力を持ってんだ?」
「それは・・・・・。」
ニノは俺の問いに、その先の言葉を飲んだ。
「・・・リーダーはお前の能力のこと、ちゃんとわかってんのか?」
俺の言葉にニノは無言でゆっくりと頷く。
「・・・そうか。
とりあえず、お前を理解してる人間がちゃんといるんだな?
・・・後で話し聞かせろよ?
俺だってどんな和でもちゃんと味方だからな?」
「・・・ありがと、潤君。
やっぱJはカッコいいワ。」
「言ってろよ、バーカ!!」
そう言って笑い合うと、目の前のキメラを睨んだ。
「俺の能力な?」
不敵な笑みが口元に浮かぶ。
「“螺旋”をちょこっとだけいじれるんだよね。」
すうっと手を伸ばし、俺は意識を目の前のキメラに集中した。
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作者名:あさり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/a-ground/
作成日時:2012年4月11日 0時