検索窓
今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:233,229 hit

entertainment-余興-19/J ページ19

キメラと呼ばれる化け物は、俺を視界に捉えたままボタボタと涎を床に落していく。


ジィっと俺を見つめたまま、微動だにしない。


野生動物が見せる捕食の瞬間だ。


草むらに隠れ、襲い掛かる次の瞬間の為に集中力を極限にまで高めているんだ。


キリキリと締めあげられるような緊張感の中、キメラの低い呻り声だけが辺りに響いていた。


俺の右手が微かに動いたのを眼で捉えると、キメラは体をばねのように弾ませて俺に襲い掛かった。


「早い!!!!」


いくら人が持っていない能力はあるとはいえ、


獣の動きに人はついていけない。


跳躍したキメラを


俺は完全に見失った。


「潤君、上だよ。」


キメラを見失った俺に、ニノの冷静な声が降り注いだ。


その声を頼りに、俺はそのまま後ろへと退く。


退いた俺とニノは背中合わせで立っていた。


攻撃をかわされ、今一歩で俺を捕食できなかったキメラは忌々しそうに鼻の頭に皺を寄せ、低いうなり声をあげている。


そんな俺達を、リーダーは必死な顔で見つめていた。


「なんだよ、ニノ。
リーダー、ほっといていいのかよ。」


「あの人、怪我人だからね。
あそこで大人しく見てるように、言い聞かせてきたよ。
・・・・潤君、どんな能力を持ってるか知らないけど、オレがフォローする。
オレの言う通りに動いて。」


「なんだよ、ソレ。
和、お前・・・・・・・。
一体どんな力を持ってんだ?」


「それは・・・・・。」


ニノは俺の問いに、その先の言葉を飲んだ。


「・・・リーダーはお前の能力のこと、ちゃんとわかってんのか?」


俺の言葉にニノは無言でゆっくりと頷く。


「・・・そうか。
とりあえず、お前を理解してる人間がちゃんといるんだな?
・・・後で話し聞かせろよ?
俺だってどんな和でもちゃんと味方だからな?」


「・・・ありがと、潤君。
やっぱJはカッコいいワ。」


「言ってろよ、バーカ!!」


そう言って笑い合うと、目の前のキメラを睨んだ。


「俺の能力な?」


不敵な笑みが口元に浮かぶ。


「“螺旋”をちょこっとだけいじれるんだよね。」


すうっと手を伸ばし、俺は意識を目の前のキメラに集中した。

entertainment-余興-20/N→←entertainment-余興-18/N



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (402 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
208人がお気に入り
設定タグ:大野智 , 二宮和也 , 大宮   
作品ジャンル:SF
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あさり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/a-ground/  
作成日時:2012年4月11日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。