entertainment-余興-11/N ページ11
「左だ!!
左に避けろ!!智!!!」
オレの叫びに大野さんが横っ跳びに左に避ける。
キメラの黒くて鋭い爪が、床を砕きながらまるで大野さんの動きを追いかけるように襲い掛かる。
・・・・悪くない。
元々、卓越した運動神経と勘の良さがある人だ。
オレがキメラの動きを読んで
大野さんに伝えることによって
五分以上の動きを見せている。
キメラの爪が食い込んだ部分から、床がひび割れタイルが巻き上がった。
後一歩のところで、大野さんを捕食できないことで、相当な苛立ちを感じている。
横っ跳びに避け体を屈ませた大野さんは、顔は目の前のキメラを見据えたまま、空色の瞳に一層強い輝きを乗せた。
瞬間、地割れを起こしたように床が割れ、地走りを噴き上げながら目に見えない力が、キメラに向かって進んでいく。
力の塊がキメラを捉えると、そのまま化け物を壁に叩きつけた。
ギイヤァァァッッ!!!!
怒りに満ちた雄叫びを上げながら、叩きつかられた壁をミシミシと音をたたせ、怪物はその体を起こす。
口からは真っ赤な血の泡を吹き、目には最大級の怒りを乗せて、捕食しようとする獲物の動きをただじっと伺っている。
「な・・・んだよ、まだ生きてんの?」
張り詰めるような緊張感の中、大野さんは額の汗を拭いながら自分を睨み据えるキメラを見つめる。
「大野さん、絶対に目を逸らすなよ。
逸らした瞬間、アイツが襲い掛かってくる!!」
ジリジリと焦げ付くような緊張感の中、先に動いたのはキメラだった。
大野さんに向かって猛然と突っ込んだのだ。
「早い!!!!」
先を読もうにも怪物の頭の中には、ただ自分を傷つけた大野さんに対する怒りだけで、ただ何も考えず彼に襲い掛かる。
「逃げろ!!リーダー!!!
殺されるぞ!!!!」
オレがそう叫んだのと同時、キメラは跳躍し、一気に大野さんとの間合いを詰めた。
「逃げて!!!
逃げて!!!!智!!!!!!」
懇願するようなオレの絶叫が響き渡る中、身動きの取れないリーダーにキメラの爪が襲い掛かった。
「う・・・わぁぁぁっ!!!!」
リーダーの胸元には抉られたような傷がしっかりとつけられて、
自身の爪にこびりついた鮮血を、キメラは上手そうに舐め取っていく。
赤い舌が鮮血を味わうように舐めると、ライオンの顔には不気味な笑みが浮かんだような気がした。
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作者名:あさり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/a-ground/
作成日時:2012年4月11日 0時