4話 ページ5
「はい、いただきまーす」
「「「いただきまーす」」」
「まー」
手を合わせた瞬間、テーブルの上の大皿めがけて3人の腕が伸びる。
育ち盛りの男3人にとっては、大皿の上に山盛りされた餃子など、あっという間に無くなるのだが、互いの箸を押し退けながら、一つでも多く食べようと必死である。
「お前ら落ち着いて食べてくれる!?」
がっつくFB、あろま、えおえおに向かって、きっくんが顔を顰める。
彼の目の前には、別で取り分けられた餃子1人前が鎮座している。
そのきっくんの隣で、離乳食卒業期にさしかかっているAが、自分のご飯をもりもり食べている。
Aは肉よりも魚や野菜が好きらしく、それらを多く使った方がよく食べる。
小さな器に、ミックスベジタブルをたくさん入れたシチューもどき(薄味)を用意してもらい、器用にスプーンで掬って食べている。
「Aはこんなにお行儀良くご飯食べてるのにねぇ」
美味しい?
きっくんが聞くと、元気よく「んま!」とAが答える。
この辺は男兄弟という環境のせいか、言葉遣いが些か宜しくない。
まぁおいおい矯正していこうというのが、きっくんの考えだ。
「Aはシチューか。美味いか?」
「んま!ま!あー!」
反対隣にいるあろまに、スプーンを差し出すA。
どうやらひと口分けてくれるらしい。
喜んで、あろまがそれをパクリと食べた。
御世辞にも美味いとは言えない薄味だが、食事の練習をするAには、野菜の食感などが丁度いいのだろう。
小さな口いっぱいにご飯をつめ、もきゅもきゅと口を動かしている。
「A、ついてる」
ほっぺについたシチューを指で拭って、それをパクリと口に運ぶ。
「あー!あー!」
「ん、何」
スプーンから手を離し、小さな手をあろまに伸ばすので差し出してやると、あろまが口に入れた親指をパクリと加えた。
指をしゃぶるようにちゅぱちゅぱと音を立てて吸いながら、うっとりと目を細めている。
「A赤ちゃんに戻ってるぞー」
クスクス、と隣できっくんが笑っているが、現在進行形で指を吸われているあろまは、手で目を覆い天を仰いで「ジーサス…」と呟いた。
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作者名:ねい | 作成日時:2017年8月28日 22時