3話 ページ4
「おぉ、A歩くの上手になったなぁ」
テーブルに掴まって立ち上がったAが、よちよちとした足取りで、ソファに腰掛けるえおえおの側まで歩いてきた。
少し前まではふらついて、何度も転んだり尻餅をついたりしていたのに、すっかり歩くのが上手くなっている。
「そりゃあ、ちょっとずつ練習させてるからなぁ」
毎日きっくんが時間を見つけては、Aの歩行の練習をしていたらしい。
だが足取りはまだまだ覚束無い。
「A凄いなぁ」
「あいー」
えおえおの足に抱き着きながら、満面の笑顔を浮かべるAの頭をくしゃくしゃと撫でる。
よいしょ、と立ち上がると、Aの両手をとって万歳させた。
「はいA、いっちに、いっちに」
えおえおの掛け声に合わせ、Aが小さな足を一歩、また一歩と前に出す。
時折腕を引いて空中に浮かせると、Aがきゃあきゃあと楽しそうに声を上げて笑う。
「あんよは上手、あんよは上手」
「おーう、よーう」
えおえおの言葉を真似しているのか、よちよち歩きながらAも声を出す。
のんびりグルグル、2人でリビングを散歩した。
「ただいま」
「あまー!」
「おかえり、あろま」
ちょうど帰宅したあろまがリビングに顔を出すと、えおえおの手を振り払い、Aがあろまの足に抱き着いた。
あっさり振り払われた手を寂しく思いつつ、えおえおは再びソファに腰掛ける。
あろまの足にしがみついたままのAは、ぴょこぴょこ飛び跳ねながらご機嫌な様子だ。
「いい子にしてたか、A」
足を浮かせて、指でAのお腹をこしょこしょしながら聞いてくるあろまに、Aが元気よく頷いた。
そうかそうかと褒めるあろまに、満面の笑顔を向ける。
「きっくーん、今日の夕飯何ー?」
「今日ー?餃子ー」
歩こうとするあろまの足に、がしりとAがしがみつく。
あろまはAが落ちないよう、足を曲げず器用に歩きながら、キッチンで夕飯の準備をしているきっくんに声をかけた。
抱っこちゃんのようにあろまの足にしがみつくAを、えおえおがこっそり携帯のカメラに収めた。
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作者名:ねい | 作成日時:2017年8月28日 22時