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2話 ページ3

 
「…そろそろ行くか」


朝食を食べ終えたあろまが、時計を見ながらそう言った。
時刻は8時を回ろうとしている。
ここから学校まで歩いて15分程度だが、ここからが壮絶なバトルの始まりである。


「はいAちゃん、こっちおいで?」
「あろま、カバン」
「忘れもんないか?」
「お前ら弁当ちゃんと持て。せっかく作ってんのに」


あろまの腕の中でご機嫌だったAをきっくんに渡し、えおえおがカバンを渡す。
カウンターに置かれたそれぞれの弁当をFBが手渡して、急ぎ足で玄関に向かう、と。


「やあぁぁぁぁぁぁ!!!」


あろまから離されたAが、大声で泣き始めた。
顔をぐしゃぐしゃに歪ませて、大粒の涙を流して。


「あぁあぁあぁああぁあぁああぁ!!!」
「…今日もAは元気だな」


えおえおの呟きも、Aの泣き声に掻き消される。
きっくんの腕の中でじたばたと暴れながら、靴を履くあろまに向かって、一生懸命手を伸ばす。


「A痛い痛い。足蹴らないで」
「夕方には帰ってくるよ〜」
「あっ、しまった」
「おいA離せ!」


油断していて、Aの手があろまが着ているカーディガンを掴む。
子供ながらにしっかりと握力のあるAは、未だ大声で泣きながら大好きなあろまを呼んでいる。


「ま゛ぁ゛ー!!!ま゛ぁ゛ー!!!」
「こんなに好かれて羨ましいなぁ、あろま」


ギロリ、口元に笑みを浮かべているえおえおを睨みつける。
末の子にここまで好かれるのは、正直悪い気はしない。
あろまだってAが憎い訳では無い。可愛いと思っている。
だが出掛けるたびにこんなにも爆泣きされ、カーディガンを何着もダメにされては堪ったものではない。
えおえおも当事者になればそんな笑みを浮かべていられる余裕はないのに、現状Aがここまで酷くぐずるのはあろまにだけだ。


「ま゛ぁ゛ー やぁー」
「A、兄ちゃん夕方には帰ってくるからいい子で待ってろ」


くしゃくしゃと頭を撫でると、涙を流しながらもしゃくり上げる程度まで収まった。
不安そうな顔のAにニコリと微笑んでやると、あろまのカーディガンを持つ手の力がふわりと緩む。


「「「行ってきます!」」」
「はーい、いってらー」
「ま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」


その隙を見計らって、3人が脱兎の如く駆け出した。


 

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作者名:ねい | 作成日時:2017年8月28日 22時

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