おまけ 1 ページ12
「あろまー、時間ー!」
「やっべぇ!行ってきます!」
「あ゛ま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
珍しく出かける前にのんびりしていたあろまは、きっくんに指摘され、大慌てでリビングを飛び出した。
ドタドタと足音荒く廊下を走る足音が遠ざかり、玄関のドアが閉まる弟が響く。
「あぁ〜、Aちゃん泣かないで〜」
「あ゛ま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
あろまが大好きなAは、彼の姿が見えなくなるたび、こうして大泣きする。
今日も短い手足をばたつかせ、鼻水と涙と涎で顔をべちゃべちゃにさせながら、いなくなったあろまの名前を呼んでいた。
声の限り泣くAに苦笑を浮かべながら、きっくんがハンドタオルで汚れたAの顔を綺麗にする。
「あろま 夕方には帰ってくるからね、Aちゃん」
「あ゛ま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛〜゛」
毎日きっくんが抱っこしながら、泣きじゃくるAを宥めるが、Aが泣き止むのは、泣き疲れた時だけだ。
まだ暫く時間がかかる事を知っているきっくんは、一旦Aをカーペットに下ろした。
何か気を紛らわせるものを持ってこようと、リビングを後にする。
「あ゛ー ま゛ー......」
しゃくり上げながら、匍匐前進よろしく、Aがカーペットの上ではいはいする。
そのAの目の前に、脱ぎ散らかされた衣類の山があった。
Aはボロボロ涙を零しながら、衣類の山に向かって動き出す。
山の中に顔を埋め、無意識に息を吸いこんだAの鼻腔が、恋しい匂いに包まれる。
これは今朝、急いで着替えた時に、脱ぎ散らかされていったあろまの残骸だった。
「あまー......」
呼べど探せど姿の見えない存在の匂いを嗅いで、Aの瞳からまたボロボロと涙が零れ落ちる。
ぐりぐりと頭を擦り付け、Aは恋しい人の名前を呼び続けた。
*
────ピロン。
「.........!!」
あろまのスマホに、きっくんからメッセージが届いた。
そこには、あろまの脱ぎ散らかしていった衣類に包まれ、すやすやと寝息を立てるAの写真と動画だった。
43人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ねい | 作成日時:2017年8月28日 22時