１話 ページ2
「はぁ〜い、Aちゃーん、起っきしようね〜」
ふわぁ、と大きなあくびを漏らしながら、きっくんがそばで眠るAの身体を揺する。
1歳になるかならないかのAは、起っき、起っき、と体を揺すり続けるきっくんの手を、煩わしげに払おうと身体を捩った。
だが大した抵抗にはならず、今度はひょいと抱き抱えられる。
まだ寝ていたい、と目の前にあるきっくんの胸板に、額をぐりぐり押し当ててぐずる。
きっくんは慣れた様子でAの背中をポンポンとあやしながら、キッチンへ移動する。
ふかふかのソファの上にそっと降ろすと、今度はそこに額を擦り付ける。
後は起きてくる下の弟達にAの相手を任せ、朝ごはんの準備にとりかかる。
「ふわぁ〜。Aちゅわん、おはよぉ〜」
一番最初に起きてきた次男のFBが、Aを抱き上げて頬ずりをする。
もちもちふわふわのAの頬が気持ちよくて、スリスリするスピードを上げると、Aから「やぁ〜」と抗議の声が上がった。
「うー、やっ！」
「そうだなぁ、FBやだなぁ、A」
次に起きてきた四男のえおえおが、FBからAを抱き受ける。
兄ちゃん傷付くなぁ、なんて朗らかに笑いながら、今度は人差し指でAの頬をぷにぷに突っつく。
Aの頬を堪能したFBが洗面所に消えていくのを見送って、Aを自分の方に向ける。
「A、おはよう」
ちゅう、と柔らかな頬に唇を寄せると、きゃあきゃあと声を上げてAが笑う。
小さな手が頬をぺちぺち叩く感触が愛おしくて、ぎゅうっと小さな身体を抱き締めた。
「おめーもさっさと洗面所行け」
「いって。蹴るなよあろま」
「あまー！」
腰を蹴られて振り返ると、腕を組んで不機嫌そうな顔をしたあろまが立っていた。
眼鏡の奥から覗く鋭い眼光と、しきりに飛び出す舌打ちが、彼の不機嫌さを如実に表している。
彼は毎朝機嫌が悪いのだが。
「まー！まー！」
「はいはい、あろまな」
両腕を前に伸ばし、足をじたばたさせながらあろまの方に行こうとするAを、望み通り渡して、えおえおも洗面所へ消える。
あろまの腕に収まったAは、頬を紅潮させ、短い腕を目一杯伸ばしながら、あろま、あろまと呼んでいる。
「ああ、はいはい。おはようさん」
暴れるAを宥めるように抱き締めて背中をポンポンとあやすと、ぎゅうっと首に抱き着いてくる。
あろまが来てすっかりご機嫌になったAを抱いて、全員がテーブルについた。
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作者名：ねい | 作成日時：2017年8月28日 22時
