58話(side:E) ページ8
「お祭り行きたい」
夕飯の買い物帰り、公園前に貼られているポスターを見て、Aがぽつりとそんなことを言った。
どうやら週末、近くの神社でやる夏祭りがあるらしい。
そういや夏祭りなんて最近全然行ってねぇな。
最後に行ったのいつだったっけかな、と考えてたら、控えめに繋いだ手を引かれる。
下を見れば、本当に行きたそうな顔をしているA。
お兄ちゃん、なんてちょっと切なく甘えた声で言われてしまったら、行かない訳には行かないだろ。
「はい、Aちゃんこっち向いて?」
それから、帰ってすぐあいつらにAが夏祭りに行きたがってる話をしたら、一も二もなく行く事が決定した。
次の日には、Aの浴衣をきっくんが張り切って選んできて、当日の今日、ご機嫌でAの着付けをしてくれている。
「お前な、浴衣くらい着せられるようになれや」
溜息混じりにきっくんが言うけど、その顔にはAの着付けが出来て嬉しいって書いてある。
てか女の子の着付けが出来るきっくんがおかしいんじゃないかって言ったら、脱がした浴衣を着せてあげなきゃいけないだろって言われてしまった。
……深くは突っ込まないでおく。
そうこうしてる間に、Aの着付けが順調に進んでいく。
白地に淡く大きな桜の花が印刷された浴衣は、近くで見ると色使いのせいか、薄い青みがかっても見える。
浴衣と同じ白い帯には、糸で赤い金魚と鬼灯が刺繍されていて、ちょっとレトロ感がある。
最後にはめ込むだけのリボンを帯に刺してもらって、Aの着付け完了である。
「A可愛い」
えへへ、とおすましさんしてるAを、これでもかってくらい写真に収める。
横姿とか後ろ姿とか、ちょっと後ろから振り返ってる姿とか。
世のお父さん方が、娘の写真をたくさん撮る理由が良く分かる。
これは撮る。撮りたくなる。
「Aちゃん、髪も少し弄ろっか」
きっくんに邪魔って言われてしまい、しょうがなくソファに腰を下ろす。
アイロンやらコテやらを使って、Aの髪に軽いウェーブをかけて、それを全部左側に持ってきて、ピンやら何やらでサイドアップにしてしまうきっくんは、本当に器用だと思う。
「はい出来た。Aちゃん可愛い!」
最高傑作と胸をはるきっくんの言うように、Aがめちゃくちゃ可愛くなった。
またこれでもかってくらい写真を撮って、満足した頃に、きっくんと一緒にAの手を引いて、夏祭りに出発する。
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ねい(プロフ) - ひろひろ花さん» ひろひろ花様、コメントありがとうございます。一気に読んで頂けるとか感謝感激です。頻度はまちまちですが、今後もこんな感じで続けていこうと思っておりますので、お付き合い頂けますと幸いです(*´∀`*) (2017年9月6日 10時) (レス) id: 6c8b868609 (このIDを非表示/違反報告)
ひろひろ花(プロフ) - パート1から一気に全部読んでしまいました、読みやすいし素敵な内容でめっちゃ好きです…!続きお待ちしてます〜!頑張ってください、応援してます! (2017年9月3日 23時) (レス) id: c83e1355fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねい | 作成日時:2017年8月21日 23時