70話(side：Ｅ) ページ20
「相変わらず人が多いな〜」
ホームに溢れる人の波を見て、きっくんが顔を顰める。
FBはきっくんの言葉に、苦笑を浮かべている。
隣のあろまは携帯に夢中だけど、片手はAとしっかり繋がっている。
もちろん、Aのもう片方の手は、俺の手と繋がっている。
『まもなく○○線に電車が参ります――』
アナウンスの後、ホームに電車が入ってくる。
ドアが開いて、吐き出されるように人が押し出され、吸い込むように、同じ数以上の人が飲まれていく。
俺達も乗り遅れないように、人の波について電車に乗る。
残念なことに車両はほぼ満員で、真ん中辺りに陣取った俺達は、吊革くらいしか掴まるものがない。
流れる景色を見るための窓も遠いから、Aがしょんぼりと項垂れる。
「Aちゃん、お外見れなくて残念だね」
同じようにしょんぼりするFBに、Aが頷く。
初めて電車に乗って以来、Aは窓から見える景色を眺めるのが好きになったようで、空いていれば窓際や、扉の前に齧り付いて、流れる景色をじっと見つめている。
切り替わるように景色が変わるのが、面白いらしい。
「A、電車揺れるから手摺とか持っとけ」
さすがに俺とあろまと手を繋いでいるだけでは、ふとした瞬間倒れかねない。
でも小さなAは吊革には掴まれないし、そばに手摺もない。
中途半端な位置に立ってしまったAを、きっくんが呼ぶ。
「Aちゃん、転けないように隣にしがみついといたらいいよ！」
名案、とばかりに親指を立てるきっくんに、一瞬首を傾げたAだったけど、ふっと俺を見上げると、にぱっと笑った。
うんわかった、とAが頷いたのと、電車が発進して大きく揺れたのは、ほぼ同時だった。
「えいっ」
そう言って、Aが俺の腰に抱き着いてきた。
ぎゅって。ぎゅって。めっちゃ笑顔で。
「これでころばないよ！」
えらい？
とでも言いたげに見上げてくるAの頭を、ほぼ放心状態で撫でる。
なんだ転けないように俺に抱きつくとかA可愛すぎて頭どうにかなりそう。可愛い。
「お前酷い顔してるわ」
「あろまも大概な顔してる」
手を振り払われたあろまは歯を食いしばりながら俺を睨んでいる。
ふふん。羨ましいだろ。
電車が揺れるたびに、抱き着いてくるAの力がちょっと強くなるのを可愛らしく感じながら、目的地に着くまで、俺は幸せな時間を味わっていた。
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ねい(プロフ) - ひろひろ花さん» ひろひろ花様、コメントありがとうございます。一気に読んで頂けるとか感謝感激です。頻度はまちまちですが、今後もこんな感じで続けていこうと思っておりますので、お付き合い頂けますと幸いです(*´∀｀*) (2017年9月6日 10時) (
レス) id: 6c8b868609 (このIDを非表示/違反報告)
ひろひろ花(プロフ) - パート1から一気に全部読んでしまいました、読みやすいし素敵な内容でめっちゃ好きです…！続きお待ちしてます〜！頑張ってください、応援してます！ (2017年9月3日 23時) (レス) id: c83e1355fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねい | 作成日時：2017年8月21日 23時
