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Blue Wave # 夏油傑 ページ1

この日は朝からよく晴れていて釣り日和だな、なんて考えながら正門をくぐっていた。

すると後ろから聞き慣れた声に呼び止められた。


「夏油!」


振り返らなくてもこの声だけは聞き間違えない。

足を止めて振り返ると、思った通りの人が小走りにこちらに向かっている所だった。


「A」


Aは私のすぐ前で足を止めるとフウッと息を吐き出した。

「今日、任務は?」


「無いよ」


「え〜!聞いてない!!」


「忙しかったから連絡する暇が無かったんだよ」


「もう!これで何回目よ」


眉間にシワを寄せて軽く唇を尖らせる。

見るからにご立腹のようだけど、その仕種が可愛くて私は思わず笑ってしまう。

Aは私を一瞬だけ睨んだがすぐに表情を緩めた。

「ま、いいや。で?今からどこ行くの?」


「海釣りだよ」


「一緒に行ってもいい?」


これは予想外の出来事だった。


「いいけど……」

その不意打ちのような言葉に返事を躊躇っていると、それを見抜いたかのようにAは言葉を被せてきた。


「何?私を連れていけない理由があるの??」


いえ、寧ろ……。


「大歓迎です」


笑顔でそう返すとAは私の隣に並んで歩きはじめた。

Aの歩いてる右側がやけに熱く感じた。














「夏油ってさ、釣りしてる時は何考えてるの?」


いつもの釣り場に腰を降ろして釣り糸を海に投げ入れる事数分。

突拍子もない質問に今度は間髪入れずに笑顔で返事をする。


「Aの事」

するとAは口元を緩めて「調子いいんだから」と笑った。

「アハハ、本当だよ」


「はいはい」


こんなやり取りは日常茶飯事。

ただ頭ごなしにそれを信じて貰えないのは日頃の行いのせいなのだろう。



私は本気なんだけどな。



「で?本当は何を考えてるの?」

「そうだな…、私の場合は釣りだけじゃなくて海を見るのも好きだからね」


「そうなの?」


「海見てるとさぁ…何か落ち着くって言うか、波の音とか聞いてると嫌な事とか忘れる感じ」


「だから夏油っていつも笑ってるんだ」


「ハハ、そうなのかな」



私がいつも笑っている?



そう言われたらそうなのかもしれない。

でもこれは私なりの防衛線。

誰にも心を読まれない為の私なりのポーカーフェイス。




Aは知らないだろ?




本当は吐き出したい気持ちを抑えるのに必死なんだよ?






私達はしばらく黙り込んだ。

耳に入るのは岸壁に打ち付ける波の音だけ。

Blue Wave # 夏油傑→



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作者名:いちご | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年5月12日 19時

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