ネージュに染まれ (ページ29)

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夜道の迷子は君のこと目黒side ページ29

人手不足にも程があるっつうの

バイト終わり終電に飛び乗った

駅の改札を出てコンビニで飲み物でも買って帰ろうと思えば
小道から聞こえてきたのは聞き覚えのある声で思わず足を止めた

「なんで北斗にそんなこと言われないといけないの？」

「待てってA」

「離してっててば」

「お前ねこんな呑んでて放っておけるわけないでしょ」

「全部中途半端なんだよ樹も北斗も私も
....大我だってそうなんだよ」

うちの姫の手を掴む男の人は苦しそうな顔してて

まあAだってとんでもなく苦しそうで

まずAの口から出る言葉の全てが苦しいわけで

見て見ぬふりをしようかと思ったけど

それが出来なかったのは

初めて見た時のAの辛そうな顔が頭から離れなかったから

『A？』

ゆっくり近寄って名前を呼べば驚いた顔をして咄嗟に男の人の手を振り払う

「なんでいるの？」

声を震わせて唇を噛むAは俺を見上げて眉を下げた

「だれ？」

やたらと顔の整ってる男の人は俺の顔を冷めた目でじーっと見る

『すいません連れて帰っていいですかこいつ』

Aの手を優しく掴めばAは俯いて声を出す

「ごめん北斗今日は帰らせて」

「...Aまた連絡する」

最後に俺をもう一度じーっと見て男の人は俺に背を向けた

『A帰ろっか』

顔を覗き込めばAは俺の手をぎゅっと握って呟いたんだ

「ごめん」

別にAは悪いことなんて何もしてないのに

辛そうに

寂しそうにさ