ネージュに染まれ (ページ27)

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最短コースを教えて岩本side ページ27

走る足を止めたのは公園のベンチに座っているAを見つけたから

スマホを耳に当てながら髪をかきあげて俯いてるのは紛れもなくAだ

近寄るべきではないと思ったのに

近寄ったのは俺

少し声を荒げたAは長いため息をついていて

見てはいけないものを見てる感覚になったんだ

「私は大我のものじゃないんだよ」

小さな声は俺の耳にはしっかり届いて足音を立てずに自販機へ向かったんだ

Aが何かを抱えてるのはみんな気付いてて

でもそれは俺らといれば徐々に変えていく自信があったのを

そんな自信を根っこから折られた気分になったのは

あまりにも苦しそうな声を出していたからだ

自販機でコーヒーをふたつ買ってAの元へ近付けば電話が終わったのか空を見上げるAは目を閉じていた

深呼吸して声を出す

『Aこんなとこでなにしてんの？』

肩をビクッとさせたAはゆっくり目を開けて振り向いた

「ひーくんこそ」

いつもの声で笑いながら

『うんトレーニング』

目尻に皺を寄せて笑えばAは俺の持つコーヒーを見てそれ私の？なんてにっこり笑う

「見てよまんまるお月」

夜空を見上げて指をさしたAは普通の女の子

『綺麗だね』

缶コーヒーを一口飲むAは月に手を伸ばしたんだ

「そこにあるのに遠いよね」

遠いのは君だよ