【実l況l者】なにもなくても掴めなくても【rt】

関係ないなんて言われたくない ページ13

暫しの沈黙に耐えられなくなって口を開こうとしたら「じゃあ、理由を聞こうかな」とガッチさんが優しく笑いかけてくれた。
ちょっと泣きそう。

話そうと決めたからにはきちんと話そうと思ってた。
出会った経緯は偶然、それは偽りのない事実やし。
夜中になってまでひとりで泣いてる女の子を放っておけんくて一晩家に泊めた。
もちろん、手なんて出してない。
情緒が不安定で死にたいと言ったり自 殺未遂をしそうになってる彼女をどうしてもそのままに出来なかった。
旦那さんの話をするのは狡いとは思ったけど、することによって感情が少なからず傾くことはわかってた、自分もそうやった。
だから、包み隠さず全て話した。
ガッチさんは相変わらず優しい顔をしていたけど眉が明らかに下がっていた。
うっしーは床の一点を見つめて苦虫を噛み潰したようような表情をしていた。
キヨくんはただ俺の目をずっと見つめて話を聞いていた。
キヨくんのこういう顔が俺は昔から苦手、見透かすような全て心の内を読まれてるようなそんな気ぃする。
本人は意外と何も考えてない、無意識、だから厄介。
話を終えた後も各々が何か考えているのか少し間があった。

「別にいんじゃね」

最初に声を発したのは意外にもキヨくんで、俺は少しだけホッとした。
良かった、ちゃんと話せたな。

「その内、自立させんでしょ？」

うっしーの言葉は胸に深く突き刺さった。
自立させるつもりなんてない、本当はずっと関わりが欲しい。
レトルトは何も関係ないんだし、そんなことを言ってそうなうっしーと目が合う。
そう、俺には関係ない、でも関係ないことが嫌や、関係ある人になりたくてこうしてんのに。
ただ、今この場に俺の感情論は必要ない。
「そのつもり」とだけ答えて場を凌いだ。

その一方でガッチさんは「付き合っちゃえば問題ないのにねー」とへらへら笑っていた。
ガッチさん以外の俺を含めた3人がホッとしたのがわかった。
「ガッチさんは軽いんだよ！」と、うっしーが口火を切ってくれた。
それのお陰でいつもの空気感を取り戻せて変な空気になることもなく無事に実況も撮れた。

相変わらず、早く帰りたがってたキヨくんに負けて日付が変わったあたりで解散することになった。
先出ててと3人を見送って今日はここに泊まるか、とスマホを見ると10分前にメッセージがきていた。

「すみません、ご飯作り過ぎてしまって……ご都合が合えばいかがです？」

俺は鞄を引っ掴んで家を後にした。

真っ直ぐな瞳→←カミングアウト

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す