カミングアウト ページ12
撮影が遅くなりそうなら連絡するからその時はこっちで寝ていいよ、俺はあっちのソファで雑魚寝するからと言うとAちゃんは何かを思いついたようにスマホを手にした。
「連絡先……教えて貰ってもいいんですか?」
言い方に期待してしまうんやけど。
しかも加えて、少し頬が赤いような……気がする。
俺が実況者やから気遣ってそんな言い方をしたのか、それとも……いや、こんな希望的観測は自滅するだけや、やめやめ。
「こっちこそいいの?」
そう言ってスマホを取り出すと「わたしは嬉しいです」と言ってくれた。
俺も嬉しいよと言うのは恥ずいし、何か勘付かれそうな顔になりそうで口元を結び直すことしか出来んかった。
Aちゃんを撮影部屋に送りがてら「あいつらに言うのはやっばり嫌?」と聞くと「知り合いではないので平気です」とあっけらかんとしていたのは意外やった。
「理由も全部話していいですよ」
あの壮絶な話をするんは俺には無理そうやなとは思ってたけど、隠すのはやっぱり気苦しい。
「反対されたら出てきますので遠慮なく言ってくださいね」
また無理に笑顔を作ってきた。
今その顔させてんのは俺やな。
「心配しないで、あいつらはだめなやつらやけど、悪いやつらなわけやないから」
Aちゃんは俺を見上げてニコッと今度はちゃんと笑えていた。
「ふふっ、知ってます」
次の日、俺は集合時間の何時間も前に撮影部屋に来ていた。
遅くなってもいいようにちゃんと家にはタオルとかわかりやすいように置いてきた。
「寝巻きとかは一応持ってくんで気にしないでください」
「了解、仕事、無理せんで」
最初のメッセージアプリのやり取りなのにスタンプも絵文字も顔文字もない質素な感じやったけど、それも少しAちゃんらしかった。
「っし、なんとかなるやろ」
ゲーム機の準備やらいろいろしていたらいつの間にか時間になっていた。
4人集まると俺は神妙な面持ちで「撮影前に話がある」と持ちかけた。
うっしーは「何だよ?実況やめんの?」と茶化してきてくれたけど、それには乗れずにいると「すまん」と謝ってきた。
すまんな、うっしー、ちょっと救われた。
キヨくんは意外にも真面目な顔をしていた。
「理由はたくさんあるんやけど、ここに女の子住まわせてる」
ピリピリと張り詰めた空気感の中、声を発した。
3秒も待たずに3人の声が揃って「「「は?」」」と聞こえてきた、そうやな、そりゃそうや。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…!彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです! (2021年8月18日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます!感情直球とっても嬉しいです!!読んで頂けて本当に感謝です(;_;) (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です!ありがとうございます!! (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:luco | 作成日時:2019年3月8日 1時