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「もしもし、変わりました…」
『梁さん?先週入稿してもらった住宅メーカーのパンフ、今印刷中なんだけど。
これ…価格本当に大丈夫?』
「え…!?」
言われて、自分のデスクに移動して当該のファイルを開く。
価格表にざっと目を通すと、ひとつだけあきらかに桁がおかしい。
「ウソ…ミスってる…!」
『うちの現場のやつが印刷中に気づいた。
これやり直して製本してたら、多分納期間に合わない。』
“どうすんの?印刷ストップする?”という松本さんの問いかけに、一瞬頭が真っ白になる。
商品の価格を間違えるなんて、絶対にあってはならないことだ。
かと言って納期をずらすと、クライアントにどんな影響が出るかわからない。
「…じゅ、淳太さん、」
どうしよう、という視線を淳太さんに向けると、すでに桐山さんに事情を報告した所らしかった。
耳に当てていたスマホを下ろして神妙な面持ちをしている。
「照史に連絡して、クライアントのところ行ってもらうわ。
納期ずらして刷り直すことになると思うって。」
「は、はい…
松本さん、印刷ストップしてください。
申し訳ありません…」
『…いや、こっちも事前に気がつかなくて、悪かったね。』
いつもストイックで厳しい松本さんまでもが、わたしに気づかっている。
桐山さんはこのあと、クライアントのところへ行って謝罪と納期交渉をするのだろう。
「あの…桐山さんって、今から謝罪に行かれるんですよね?」
桐山さん一人に行かせるなんてできない。
主任席に座った淳太さんに向き直る。
「わたしも行きます!直接謝らせてください。」
「__それはあかん。」
「なんでですか!?わたしのミスなのに…!」
「それが照史の仕事やからや。」
椅子に座った淳太さんがぴしゃりと言い放つ。
真っ直ぐに見つめ返されたわたしは、次の言葉が出てこない。
「取引先にとっては、営業の照史がウチの窓口であり看板やねん。
デザイナーが急に出てきて謝罪されても、クライアントは納得いけへん。
照史もそれを理解した上で、俺らのこと信頼して仕事とってきてくれてんねん。」
淳太さんが解いたのは、桐山さんと私達との信頼関係だった。
「やから俺らも、自分に出来ること精一杯やろうや。」
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るーちょ(プロフ) - まっちゃさん» コメントありがとうございます!応援いただきとても励みになります(T-T)最終話までぜひお付き合いください。 (2019年7月19日 20時) (レス) id: 5adc9338ef (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - とても面白いです! 応援してます! (2019年7月19日 6時) (レス) id: 622cccb941 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lucio | 作成日時:2019年7月8日 18時