第19話 ページ19
・
悩んだり、行き詰まったりすると、ここへ来る。
わたしの恩師である、Jワークスから独立したヤスさんのオフィスだ。
「ほい、コーヒーでよかった？」
「あ！すいません、ありがとうございます」
ヤスさんの借りているオフィスは、お洒落で遊び心があって、仕事の関係のものにまぎれてギターやアンプが設置されていたりする。
ヤスさんらしいなって思って、なんか落ち着くんだ。
「んで？今日はどうしたん」
いつもお邪魔した時は相談事がある時だから、ヤスさんもわかっていたようで早速話を促される。
「えっと…最近、仕事に身が入ってないというか…」
「へえ？めずらしいやん」
「上の空になっちゃうことがあって、淳太さんにも注意されるし」
「…なんか悩んでるんや？」
だけど、こんな相談は今回が初で。
「その…クライアントとの恋愛って、どうなんでしょうかね…」
恥ずかしくて、言葉の後半がごにょごにょと尻すぼみになる。
ヤスさんは、眉をあげてちょっと驚いた顔だ。
「いや…俺はええと思うで？」
うなじあたりをカシカシと掻きながら、困ったような上目遣いになるヤスさん。
「それが仕事のモチベーションになるやつもおるし、
ただ、それで躊躇してまうっていうのは、梁らしいというか。」
コーヒーの入ったマグカップを持ち替えたり両手で包んだりしているヤスさんは、丁寧に言葉を選んでくれている様子だ。
「相手が大事やからこそ、気持ちはっきりさせるまで、踏み込めへんねやろ。
梁のそういう真面目なとこ、ええと思ってる奴いると思うで」
“デザイナーさんに会うのが楽しみだった”
そう語ってくれ小瀧さんの、わたしへの憧れは恋に変わったんだろう。
わたしも、この気持ちを恋と名付けるまで、焦らず大切にしていこう。
そう思えた。
・
「あっ！ゆりちゃん帰ってきた！」
ヤスさんのオフィスを後にして事務所に戻る。
すると何やら慌ただしいというか、物々しい雰囲気が漂っていた。
「もしもし松本さん？
本人帰ってきたんで変わりますわ。」
しかも、どうやら私が話題の中心のよう。
印刷所の松本さんと電話していたらしき淳太さんから、受話器を受け取った。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 109人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るーちょ(プロフ) - まっちゃさん» コメントありがとうございます！応援いただきとても励みになります(T-T)最終話までぜひお付き合いください。 (2019年7月19日 20時) (
レス) id: 5adc9338ef (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - とても面白いです！ 応援してます！ (2019年7月19日 6時) (レス) id: 622cccb941 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Lucio | 作成日時：2019年7月8日 18時
