灰色の日々 Ki ページ6
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忘却は、罪ではないはずだ。
そうしなければ生きていけないのなら、そんなものは忘れた方がいい。
忘れられるならば。
【北山……】
緩く甘く、俺を呼ぶ声。
二度と現実では響かない声。
ああ、まただ……。
歌うたいになったばかりの5年前から比べると、課せられた責任もそれに伴う意識も何もかもが重くなった今。
敬愛する陛下の為に働ける今を幸せだとも思う。
特に忙しい時はいい。
余計なことを考えなくても済むから。
けれど……忙しくなればなるほど、俺の夢に藤ヶ谷が現れる。
心と身体を磨り減らして、やっとの思いで終わらせた仕事の疲れを取るための短い睡眠時間に入り込む夢魔。
浅い眠りの夢の中で、俺は深く溜め息を吐く。
【どうかした?】
夢の中の藤ヶ谷は、いつも優しく残酷に俺を甘やかす。
そして、俺はそれが夢だとわかるくらいに何度も何度も似たような夢を見た。
伸ばされた手が、俺の頬を柔らかく滑る。
その、身体のわりに小さな手に触れられて分け合う温度に、俺は夢だとわかっているのに泣きたくなる。
【今日は俺が……】
ああ、最悪だ。
ゆっくりと俺を組敷く藤ヶ谷に俺は……。
何度も見た藤ヶ谷の夢。
甘くて柔らかくて─────……哀しい夢。
その最たるは……この何度かに一度現れる俺が抱かれる夢。
よく見る夢は俺が藤ヶ谷を抱いて愛して。
でも、本当に時々……こうして俺は藤ヶ谷に抱かれる夢を見る。
この夢は、覚めた時のダメージが抱いた夢より大きい。
藤ヶ谷を抱く夢は、俺の想いが形になって。
ただただ愛を伝えている。
言えないだけで、普段と変わらない。
でも、この夢は、藤ヶ谷が俺に愛を囁く。
二度と取り戻せない、桃色を纏った愛情。
【北山……北山……。】
ほら、愛おしい表情で、柔らかに俺を呼ぶ。
その瞳を甘やかに細めて。
あの無表情の瞳なんて、無かったみたいに。
なぁ…やめろよ。
頼むからやめてくれ。
それは、もう叶うことのない幻だから。
そう思うのに、夢の中の藤ヶ谷は容赦なくて。
─────暴かれる。
触れるその場所の奥の奥に隠したものがあるのを、まるで知っているかのように。
真に迫るそのリアル感。
少しずつ俺の中にある凍った領域を侵食していく。
藤ヶ谷はそこに何かがあるのを知っているように少しずつ少しずつ核心に近づき手を伸ばす。
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時