紅桜の鎮魂歌 第三章

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木漏れ日が差し込む小道を玉と二人並んで歩く。
柔らかな風に揺れる木の葉。
深い緑。

俺は、振り返って自分が凭れていた一際大きな樹を見つめた。

歴代の皇帝達が眠る神聖な場所。
そこには、数々の虹の軌跡が沈んでいる。
俺が歌った秘歌に、緑が呼応しているようだった。

ここに、置いていけないかな……。

歴代の皇帝陛下と共に、数々の虹の軌跡と共に、眠らせることは出来ないだろうか。



藤ヶ谷への、想いを──────……。



今すぐにはまだ出来そうはないけれど、いつかの日の為に。

藤ヶ谷が幸せになるのを傍で見届ける……その為に。
俺じゃない誰かを愛して、俺じゃない誰かの隣で、俺じゃない誰かに幸せにしてもらう藤ヶ谷に……笑っておめでとうと言う為に。
俺が与えてあげられなかった穏やかで優しい愛に包まれて、キラキラと輝くの笑顔の為に。

全ては、俺が悪い。
諦めきれない悔いが残るけれど、それでも。
他ならぬ藤ヶ谷の為に。
願うのは、藤ヶ谷の幸せだけ。

今はまだ、誰かと寄り添う姿を祝ってやれる気はしないけれど……いつか。
藤ヶ谷を想い出に。

そう思う俺の肩は、ほんの少しだけ……震えていた。




時は、止まらない。
どれほど泣いて"もう立ち直れない"と思ったとしても、時間は流れて、朝は来て、腹は減る。

それは、生きるもの全てに同様に。

藤ヶ谷から向けられた拒絶は、大きな衝撃だったけれど。
俺にも、やっぱり朝は来て、そして腹も減る。
そうやって否応なく過ぎていく時間。

そして、歌うたいになったばかりの俺は覚えることも考えることも多くて。
日々の忙しさの中に、半分凍り付いた心を混ぜて溶かして。
元々得意だった作り笑いを顔に張り付けていれば、徐々に無理がなくなっていく。

ああ……うん、人は……こうやって生きていくんだな……。

なんて感傷を日々の中で感じることにも慣れていった。







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そして、5年の歳月が流れた────。









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紅様の消息は、未だ杳として知れない。









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狂った歯車と。

凍り付いた歯車と。

そして、突如として色を変える歯車。




3つの歯車が、運命の輪を回す──────。




赤い花は、ただ風に揺れて。









「さよなら─────……」

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