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とにかく、橙館の人間は自由すぎる。
その筆頭とも言えるこの方は、気が付くと城にいないことが多い。
書類仕事が大嫌いで、蘇比様の執務室にある木目の美しい茶褐色の机には、いつもうず高く書類が積まれている。
椅子に座った蘇比様は、行儀悪く脚を机の上に投げ出して手元にあった書類に目を通し始めた。
しかし、その目は何か違うことを考えているかのように見えた。
「蘇比様?」
「んー……。」
「いかがされました?」
「……街が、変だった。」
蘇比様は、誰にも言わず自由気ままに街に降りる。
恐らく、我々橙館が作り出した物がどう使われているのかが気になるというのが発端だろうが、今となってはこの方の放浪癖は趣味だと俺は思っている。
けれど、たがらこそ蘇比様は現王朝の中で最も街を知っているはずだ。
その蘇比様が言うのであれば……
「変……とは?」
「わかんねぇ。強いて言うなら……空気?」
「空気……でございますか……?」
蘇比様は何かを考えるように宙を見つめる。
その瞳が、遠くを見るように細められたのを見て、俺は小さく溜め息を吐いた。
ああ……これダメなやつだ……。
こうなった蘇比様は、もう使い物にならないのはこの5年で学んでいる。
蘇比様の手にある決済待ちの書類は、恐らく今日は進まないだろう。
自由すぎる橙館では、補佐様も大概ブッ飛んでいる。
気が付けば補佐様の仕事のほとんどを俺が受け持っていた。
同じ補佐様でありながら、兄のように慕う桃館の補佐様とは随分と違うものだ。
もちろん、橙館の補佐様もやる時はやる人ではあるが。
細かなことに気が回る俺を見て"横尾くんに任せた方が間違いがないな"と笑窪を見せて笑われたら、どうすることも出来なかった。
「お茶にされますか?」
「……茶菓子は?」
聞こえているかも怪しいと思っていたが、どうやら耳は働いているらしい。
本当に自由だなこの方は、と思って少し笑った。
「ガレットブルトンヌなら、即ご用意出来ますが?」
「じゃあ、それ。」
お出ししたお茶を飲みながら、蘇比様は何も仰らずにただ窓の外を見つめていらした。
外は灰色の雲に覆われ、街は雨に沈んでいた。
空気が変とは、どういう意味だろうか。
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時