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茜色の教室で、色付いてしまった珊瑚色。
あの時は俺も色々と限界で。
柔らかに俺を、俺の存在を求めてくれる太輔に安心してしまった。
求められるということは、人が心の中に持つ承認欲求を満たしてくれる。
あの時の俺は、連れ立っていた仲間が歌うたいになって俺だけが候補生に残されたことに腐っていた。
誰にも必要とされないんじゃないかと。
そして、候補生でいることにも限界を感じ始めていた。
学舎を辞めてしまおうかとも。

だから、信じ続けるミツが眩しくて……そして、鬱陶しかった。

遠くから眺めるミツは、いつも太輔の隣で夢を写した曇りない瞳で前を見ていた。
そんなミツに全身で恋をしているように見えた幼い太輔。
あの頃確かに二人は……幸せそうだった。

そのうち落ちこぼれだった裕太と宮田もがミツに懐き始めて。
そして、ニカの学舎の脱走。
初めて間近で感じたミツの求心力。
あっという間に懐に入り込まれて、手を貸してやりたくなってしまった俺。

ミツの魅力に魅せられて、太輔に必要とされて。

そして俺は歌うたいになった。
あの二人が、何も言わずに前を走ってくれたから。
弟達を守るように俺に俺の居場所をくれた。

なのに。

ミツの瞳が寂しげに揺れているのがわかっていながら、太輔に求められるままに太輔を甘やかしてきてしまった。
付かず離れずの微妙な距離感のままで、どちらもこのままでは苦しいはずなのに。

それをわかっているのか、裕太が動き出した。
正直なところ、俺にも裕太の真意はわからない。
ただ、裕太には裕太の考えがあって、その元に行動しているんだろう。

あの二人を、あのままにしておけないと思っているのは皆同じなのだから。



ザァァァァァ──────……



窓の外で音がして、そちらを向けば泣き出した空。
灰色の雲が空を覆い、降り始めた雨が街を濡らしていく。


「雨か……」


ぽつりと呟いた声は、誰にも拾われることなく空間に溶けるはずだった。


「雨、嫌いなの?」


それを拾われ、背後からかけられた声に大袈裟なほど肩が揺れた。
振り向くとそこには、何処を探しても見つからなかったこの部屋の主がいた。


「蘇比様……一体どちらに?」


「んー?街に行ってきた。」


「いい加減、書類に判を捺してもらえませんか?」


「あー、はいはい。」


俺の言葉に、おざなりに返事をしながら蘇比様は革張りの椅子に勢いよく腰掛けた。

まったく……この人は……。

※→←闇の胎動 Y



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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時

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