赤の秘歌 Ki ページ29
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空は高く、青く。
抜けるような空の下、一羽の鳥が北へ向かって羽ばたいていく。
あの、方角は──────……。
何度捜索隊を派遣してもあの方は見つからない。
それどころか、気配さえもない。
「紅様……。」
頭の中で、あの整った顔立ちが浮かぶ。
凛々しい眉。
意志の強さを表す双眸。
すらりとした鼻梁。
片側の口角を上げる厚い唇。
5年前に時を止めたままのお姿。
最後の月夜。
あの弓張り月の下、ここで。
俺の憧れた赤の歌うたい。
あれほど格好よくて、でも気さくで。
そして、一途に陛下を愛していらした。
抜けるような青い空にあの方の面影が浮かぶ。
♪♪〜〜♪〜♪♪〜〜〜〜
あの月夜、あの方が最後に歌っていたのはこの歌だった。
ただ陛下を想い、歌っておられたあの姿。
夜の闇をバックに、色付いて漂う赤。
強く優しく、歴代最高と謳われた伝説の紅。
青い空に吸い込まれていく俺の声。
その時、不意に背後に感じる気配。
歌を止めて振り返った俺の視界には。
「陛下!?」
本当に、この方は神出鬼没か。
俺は焦りながらも、膝を着いて頭を垂れた。
「いい。畏まるな。」
陛下は、言いながら城壁の縁へと足を進めて。
俺は立ち上がり半歩下がって陛下の後方へと立った。
何処までも続くような青い空の彼方に向けられた瞳。
その瞳に写るものは何だろうか。
いや、愚問だな。
この方の見据えるものは、国の未来だ。
「北山、そなた……良い声をしておるな。」
「恐縮です。」
陛下は、ただ彼方を見つめていた。
遠く。遠く。
その瞳には変わらず揺るぎない光が宿る。
この方は、あくまでも強くあり続けて。
その強さに、そうあり続ける凛としたお姿に、どうしようもないほどの切なさと寂しさが俺を襲う。
皇帝であることに誇りを持ち、誰とも馴れ合うことなく孤高の存在であり続ける陛下。
誰にも弱味を曝すことなく、ただ静かに。
「北山……。」
「は。」
「心は、何処にあると思う?」
「心……でございますか……?」
「左様だ。」
「ココ……ですかね……」
俺は、陛下の質問の真意がわからないままに、心と言われて自分の胸を指差しながら答えた。
そんな俺を振り返った陛下は青い空をバックに複雑な顔で笑う。
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時