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「わかんないよ、ホントに。」
グルグルと回る思考の坩堝に放り込まれたような気になった。
距離を取られたことによって、俺が北山に向ける想いは変わってしまった。
少なくとも、デビュー前に持っていた真っ白で純粋な想いではなくなってしまった。
好きか?と聞かれたら、好きだよと答えられるような・・・そんな想いでは決してない。
あらゆる感情が混ざり合って、色も形も明確にはわからない想い。
あの時取られた距離が、俺の為だったと後から言われたところで既に変質してしまった想いが元に戻るわけではない。
過ぎた時間は、もう戻らないから。
「俺はね、太輔にも知る権利があると思ってたんだ。」
「・・・権利・・・?」
「どうしてミツが太輔から離れたのか、知る権利ね。」
「・・・・・・。」
「それがわかんないから、太輔はどうしたらいいかわかんないんじゃないかと思ってさ。」
「今更・・・」
「うん、今更だね。でも、知らないままの方が良かった?」
知らないままで良いわけはないけれど、それを知ったからといってどうしたらいいかがわかるわけでもなくて。
ただ、このままの関係で良いわけはないことだけは、何となく。
「少し、考えてみる・・・。」
「うん、そうしな。今年はミツも30歳になる節目の年だからね。」
「ん・・・。」
俺の返事に満足したのか、渉は先ほど閉じた本を再び開いて、ひどく真剣な顔をして読み始めた。
タイトルを見ても全くわからないくせに、やたら派手な装丁のそれ。
「わた、それ何?」
「ん?ああ、今度バラエティーで俳句を作る番組に出ることになってね。」
「俳句って、五、七、五のやつ?」
「そ。ちょっと勉強しようかと思ったら意外に面白くてさ。」
本を見ながら笑う渉の表情は楽しそうで、それでいて真剣で。
話題が変わったことで、北山の話はそこでおしまいになった。
俺から見えていた北山。
渉の話。
北山の性格。
それから、これからのグループとしての在り方。
全てを加味して考えれば・・・
そしてあの年、一人で色々と考えて…俺はあの年のライブツアー東京公演で北山の誕生日にサプライズを企画した。
俺が構成を練って、ケーキもプレゼントも、それからライブでのサプライズも全てを俺主導で動いた。
覚えているのは、ピンクに染まった会場に「ヒロミツオメデトウ」という文字が浮かび上がって・・・それをバックに少し泣きそうに、でも嬉しそうに笑う北山の姿だった。
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流華(プロフ) - さゆさん» さゆさん、こんにちは。コメントありがとうございます。表現と描写は、本当に気を遣っている部分なので、そこを誉めてくださると嬉しくて更に頑張ろうと思えます。活力をくださってありがとうございます。今後も頑張りますので、移行後もよろしくお願い致します。 (2021年9月17日 18時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ユキさん» あははー。良いところで狙って切る癖は、今も健在です(笑)でも、ホントにこのお話はノリとか勢いで書き始めたところがあるので、そんな感じに軽いです(笑)上質と仰っていただけること、本当に嬉しいです♪♪今後もお付き合いくださいませー♪ (2021年9月17日 17時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 言葉の遣い方がとても綺麗で、文字数が多いのに一言一句しっかりと目で追ってしまいます!本当に素敵です!移行先でも楽しみにしています! (2021年9月12日 14時) (レス) id: 4e568979a2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - うわ!そこで移行ですか!!!笑 めっちゃ気になりますーー!上質なお話を読んでいたのに「面白いそー♪」って流華さんのノリの温度差に笑ってしまいました笑 続き楽しみにお待ちしてます☆ (2021年9月12日 13時) (レス) id: d4b3736ff0 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーん♪♪にゃはは〜だって、狙って切ってますもん(笑)読み返してくれたんですか!?嬉しーです♪♪今回は伏線無しだから、謎とかも無いですけど楽しんでくれたら十分です♪sioriさんが読んでると気合いも入るので!!! (2021年9月12日 12時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2021年8月11日 13時