その指先に愛を乞う

※ ページ12

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俺を自立させるために。
玉を本気にさせるために。
グループの未来のために。

自分が悪者になる事を選んだんだ、北山は。
あの喫煙所で、俺は初めてそれに思い至った。

再び紫煙を燻らせて、吸い込まれていくそれを見つめていた。
もう一度、深く息を吸い込んでゆっくりと吐いた。
小刻みに震える指先を何度か握って開いて。
言ってくれればいいのにという思いと、言われて納得出来ただろうかという思いが、自分の中でグルグルと回っていた、その時。

ガチャ。

っ!?


「お疲れ。」


思案の海に沈んでいた俺は、ガラス張りの喫煙所に近付いてくる人影には気が付かなかった。
現れたのは、つい今しがたまで思考を占拠していた相手で。

北山───────────･･･。


「っ、……」


当然、北山は俺が中に居るのが見えていたはずだ。
さっき渉とあんな話をしたはずなのに、やっぱり北山は変わらなくて。
俺が言葉を発さなくても全く気にした様子もなく、一言挨拶をして北山は俺の斜向いを陣取った。
手に持っていた箱から煙草を一本取り出して、ゆっくりと咥えて火を着ける仕草から、何故か目が離せない。


「･･･どうした？」


「っ、･･･別に･･･。」


思わず見つめてしまった俺に、北山は少しだけ首を傾げて。
その童顔は相変わらずで、年々若返っているんじゃないかと思ってしまう。
北山と渉の話を聞いたからとはいえ、ここ数年で染み付いた習性は簡単には変えられなくて。
何も変わらないような顔で尋ねられても、俺はもうあの頃と同じ顔なんか出来るはずもない。
この時の俺に出来たのは、視線を逸らして小さな返事をすることだけだった。

そうして短くなった煙草を灰皿へと捨てて、逃げるように北山を喫煙所に残したまま控え室へと戻れば、渉が何やら本を開いて真剣に向き合っていた。


「わた･･･」


「お疲れー。」


「あの、さっき･･･北山と･･･」


「ああ、うん、どうするかは太輔次第だよ。」


っ、!?

驚いて目を見開いた俺に渉は柔らかく笑う。
つまり、あの微妙に開いていた扉は渉の仕業で、あのタイミングで北山にあの話を振ったのも･･･わざと･･･。
親友の策士な一面を初めて垣間見た気がした。


「太輔は、どうしたい？」


「え……」


「ミツと、このまんまでいいの？」


渉が、真っ直ぐな瞳で俺を見ていた。
それは、逸らしたり誤魔化したりを許さない瞳だった。

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