【wrwrd】我々カレシ 2 【短編集】

詐欺師カレシ chi.Ver ページ5

「あんたなんか大っ嫌い」

「俺もあんたなんか愛してないですよ。」

これが私たちの愛情表現。

詐欺師と言われた私たちは、恋人にさえも本能のことは言わない。

お互いそれをわかっていて、投げれた暴言は全て逆の意味にとらえてる。

つまりひどいこと言われた方が愛が深いということだ。

なんとも珍妙で楽しい。

チーノはどうかわからないが、虚言癖のある私からすれば嘘を嘘とわかってくれるのはとても有難かった。

だからずっとそばに居る。

いつしか、「本当の事言ったら負け」というゲームができた。

それが出来てからはさらに高度な嘘ばかりで、仲間内でも嘘なのか本当なのかわからないようになってきた。


だけど嘘にもできない事実があることもまた確かであった。



それはある日チーノと電話しているときだった。

他愛もない嘘話、今回は世間話風だった。

アイドルの結婚や女優の麻薬所持ありもしない時事ネタを話し合って面白がっていた。

なんにも面白くないのに

笑おうとお腹に力入れた時ふと激痛が走る。

尋常じゃない痛みに声が漏れる。

「大丈夫すか」と笑いながら電話繋いでるチーノに救急車を呼ばせようとした。

しかし虚言癖はこの異常事態でも発動するらしい

「大丈夫だ。救急……車、なんか呼ぶなよ。絶対」

途切れながらも伝えた言葉は真逆。だけど私たちは嘘つきカップル、その意味を理解するのは早く。すぐ電話が切れる。

その瞬間に私は意識を手放すことになった。

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