Love*4-35[↓0826更新] ページ35
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「わたしは、」
「…」
「私は、どこにもいかないよ」
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腕を、彼の背中に回して、
私を抱きしめる力と同じくらいのそれを返す。
耳が、翔くんの首筋に当たってそこからじんわりと暖かくなる。
そのまま、ゆっくり口を開いた。
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「確かに、知らない世界は魅力的だし楽しいけど、」
「…」
「でも私は、その世界では生きていけない」
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どの世界にも、その世界で生きて来た人がいて、
そこに入ってどれだけもがいて努力したって、
私は決してその人たちに追いつかない。
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「他の人達が、アイドルになれないように、私は女優にはなれない」
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私には私が生きるべき世界がある。
私が役者として、浩樹くんや優馬くん、涼音さんに追いつかないように
彼らはアイドルとして、きっと私には追いつけない。
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「私は、外の世界じゃ生きていけないから」
「…」
「どこにも行かないよ」
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それでも、またやりたいと思うのは、
周りの5人が、違う世界で確実に前に進んでいるからで、
アイドルの世界で、5人の後ろを歩いている私は
外の世界で何かを得て、前に進もうと必死で。
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「だって私には5人しかいないもん」
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いつだって頼るべきはずっと一緒にいた5人で、
戻るべきは5人がいるあの場所だ。
私には、そこしかない、だからどこにも行かない。
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「それと。私には、翔くんしかいないから誰かに攫われたりなんかしない」
「…どうだか」
「ほんとだよ」
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ここを離れる気なんかない。
あなたを失いたくない。
だからこうやって、今まで必死に守って来て、
これからも一緒に過ごしたいと思っているから、
あなたと結婚はできないんだよ。
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「翔くんは、私の特別で」
「…」
「結婚なんかしなくても、私は翔くんのものだよ」
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形式的な、ただの紙切れ一枚の約束なんて
そっちの方が私には必要ない。
夫婦になったって、私はきっと外でデートしたいなんて言わないし、
週刊誌に追いかけまわされるのも変わらない。
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私たちが帰って来る場所を失うリスクを冒してまで、
夫婦になる必要なんかない。
だってそんなことしなくたって、この先ずっと私たちは一緒にいて、
ずっと2人で過ごしていくんだから、そんなの、いらない。
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