Love*3-11 ページ11
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″うるさい″って
よく浩樹くんに笑われながら小言を言われてる優馬くんも、
照明を浴びて舞台に立てば、
「安達優馬」の気配すら消え去る。
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笑った時の無邪気な笑顔は、
そのまま、だけど。
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涙を拭う指は、優馬くんより浩樹くんの方が暖かい。
冷たい指で頬を伝う涙を拭って、
口許をふ、とあげて笑うその目は少し寂しそうで、
もしかしたら、彼も、朝が来るまでここにいたいのかもしれない、と思う。
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ひやり、と冷えた手に、
そっと自分の手を重ねる。
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そのまま指先だけをぎゅ、と握って
私の暖が、少しでもうつればいい、と思った。
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こんな風に、私の中のマリーは
どんどん大きくなって、浸食していく。
ようやくキャラクターが確立されてきて、
それは、面と向かってお芝居をする彼たちの目を見れば、
なんとなく、わかった。
*
打ち上げのお店には、
キャストで乗り合わせてタクシーで向かった。
わたしはもう一人のマリーを演じる女優さんと、
浩樹くんと同じタクシーで。
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「姫お腹空いてる？」
「ええ…普通」
「どういうこと(笑)？」
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本当は、あまり食欲はなかった。
食べなきゃいけないのは分かってるけど、
何を食べても″おいしくない″から、
どちらかと言うと″食べたくない″という気持ちの方が、大きい。
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お店の入り口に掛かっている「本日貸し切り」という文字に、
少しだけ、安心した。
よかった、不特定多数の人に会うことはない。
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座敷の席は自由だったみたいだけど、
先に到着していた出演者は先に座っていて、
大体空いている席は限られていた。
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どこに座ろう。
みんないい人なのは、知っているけど、
できればそれなりに仲が良い人の隣に座りたい。
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ふと目線を投げた先には、優馬くんがいて、
その隣の席が空いているように思えたから、
近づいて隣いいですか？と聞く。
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優馬くんは、弄っていたスマホから目を上げて私の方を見た後、
どうぞ！と言って、あの無邪気な笑顔を見せた。
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そして、気づく。
″打ち上げ″なんて、コンサートのそれぐらいしか経験したことないけれど、
その時には必ず、彼がいて。
私は誰に許可を取らなくても、その人の隣に無条件で座れていた。
いつも彼の隣は、空いていた。
それが、当たり前、だった。
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隣に座った私を見て、ふ、と笑う彼の表情を思い出して。
不意に、泣きそうになった。
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