志麻くんとなつやすみ。【志麻】ver.2021

映画【8月21日】 ページ24

「映画いかへん？」

「なんの映画？」

「なんかやってるやつ」


すっごいざっくりとした説明をする志麻くん。
最近緊急事態宣言も出たというのに映画に行こうなんて言い出した。

「でもコロナ…」

「たしかにそうやんなぁ〜」

「じゃあ、夜の最後の時間に行こうや」

「Aがそれでいいならいいよ」

「行きたい！！」

ということで決まった映画デート。
なかなか映画に行くことってないし、家でDVD鑑賞くらいしか映画って見てない。
だから結構楽しみで、昼間っから準備タイム。

メイクもいつもと違う感じで、髪の毛も巻いちゃったりして、服もどれにしようなんて鑑の前でファッションショー。
久しぶりのデートだし可愛くいたいじゃん。


「準備できた？」

遠くから聞こえる志麻くんの声に返事をする。

「できたー！！」

夕方、セミが鳴く道を二人で手を繋いで歩く。
映画館につくと人はほとんどいなくてお店の人は片付けに入ったりしている。

そんな中映画のチケットをとって映画館の一番うしろの一番端に座った。
コロナのせいで一席ずつあけて座らなければいけないのが少し寂しい。
そう思ったのは彼も一緒なのだろう。
視線の端で動いた物、それは志麻くんの綺麗な手。

「ん？」

首を傾げると彼は「手」とだけ呟いた。

「手？」

未だ何かわからない私は自分の手を見つめる。
すると私の手は綺麗な彼の手にとられてギュッと握られた。

「……っ」

「照れてんの？」

「っ、言わないで…」


ニヤニヤしている志麻くんは私の手をニギニギとして遊んでいる。

「なぁ、帰ったらえっちしよ？」

「ばっ、そういうこと公の場で言わないの」

「公の場じゃなければいいん？」

「いや、そういうことじゃなくて…」

「なぁ、いいやろ？」

こんなところで何を思ったのか、彼から夜のお誘い。
周りに誰がいるかわからないのに普通に言ってくる彼はデリカシーがない、だけどキュンとしてしまったのは内緒。
一回だけ頷くと同時に館内の電気が暗くなり始めた。

「もー、映画始まるよ？」

「ふは、そうやな」

志麻くんは映画が終わるまでずっと手を握ったままだった。

rq:映画

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