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色白い手できゅっと私の手を包み込んだ兄さんが、静かに私を見る。
海のようでもあり、青空のようでもあるその水色の瞳は、悲しさと怒りのようなものを交え、私を見つめていた。
透き通っているはずのその色を、濁して。
「……それで、何の話をしていたんですか?」
その言葉には、どこか逆らえないような威圧があった。
先ほどの嘘をついていることがバレた時点で、これ以上嘘を重ねようとは考えてはいないが、
兄さんはどこか私に過保護なところがあると思う。
誰と何を話したというところまですべて包み隠さずに伝えることまでしなくてもいいと思うのだ。
両親に頼まれたからだろうか、そこまで兄が私に過保護になるのは。
そう頭を悩ませ、首を軽く振った。そうだ、昔っから兄さんはこれくらい過保護だったのだ。
どれだけ私が成長しても、兄さんにとって私は「放っておけない妹」なのだろう。
ふぅ、と一息ついてから、私は兄さんの目をしっかりと見つめた。
やはり不安で揺らいでいる水色の瞳。
一応私も大学生で、そこそこしっかりしていると思うのだが、兄さんの目にはどれだけ私が頼りなく映っているのだろうか。
そこまで兄さんを心配させてしまう自分にも呆れてから、私は漸く口を開いた。
「あのね、兄さん」
「……はい」
「赤司征十郎君とは確かにちょっと喋った。なんだかよくわからないことを言われたけど……たぶん、勘違いだと思う。」
「……」
私が正直に話せば、すっと目を細めて探るようにこちらを見つめる。
私には理解しかねる沈黙が、辺りの空気を流れた。
「…………兄さんは少し過保護すぎだよ。私はそんなに心配されなくても大丈夫。」
私のその一言に、兄さんは表情を固めた。
いつも無表情だが、私には些細な変化でもわかる。今、兄さんは驚愕している。一瞬にして呼吸をするための酸素を全て奪われ、息ができなくなったようにぴたりと表情が止まり、氷のような眼差しで一点を見つめた。
「………………嫌です。」
その言葉は、どこか狂気すらにじむような無感情であるのに、心の底からの訴えであるような、そんな矛盾した感情から出てくるもののように感じた。
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堕天使ルイ - なんか、ちょっと内容が分からなくなってきました。自分の理解能力の無さでw 続き楽しみにしてます。更新頑張ってください。応援してます。 (2018年3月20日 21時) (レス) id: 3344530ea6 (このIDを非表示/違反報告)
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