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そう言えば、兄さんからの着信は少なかれどあった訳だけど、この部屋に入る前に、確か赤司くんは「連絡しておく」と言っていた気がするのだが。
そんなことを考えながら、部屋に入ってきた赤司くんをぼんやりと見た。
「頭痛は良くなりましたか?」
「え?……あ、はい。もうすっかり。ご迷惑おかけしました……もうそろそろ、帰りますね」
兄さんも心配しているので。
その言葉を言おうとした瞬間、赤司くんは一歩、また一歩と私に近づきながら言う。
「俺はいつまで居てくれても良いんですけどね。むしろ居て欲しいです」
距離を詰めてくる彼の瞳は少し、熱で浮かされたかのように潤んでいて、まさしく「憧れの人に会えました」と感動してるとすら思えるものだった。
「え、えっと……赤司くん?」
「何ですか?」
「その、兄さんから着信が何件か入ってて……赤司くん、確か連絡をって」
「……あぁ、そうでしたね。忘れてました」
「なら、尚更私はもう帰らないと、」
そう言った時には、もう赤司くんは目の前だった。
私の手を握って、彼は跪いた。
「良いんです、戻らなくても。Aさんが帰る場所は、彼処じゃない」
分からない。
突然、何故彼がそんな事を言うのかも、何も。
「い、や……私、の家は、」
「……忘れているだけなんです、Aさんは。昔のことも、俺のことも……あの人が貴女に嘘をついたことも」
何を、言っているんだろう。
どうして私は、赤司くんにそんなことを言われているんだろう。
寝起きとは言え覚醒し始めた脳内には、ほんの少しずつ何かが渦巻いていた。
分からない。
そんな時はいつも兄さんが私の頭を撫でて、落ち着かせてくれた。兄さんが、兄さんだけが、いつだって私の味方だった。
同時に、兄さんの味方もきっと私だけだった。
酷く甘え上手で、一人にしたら生きていけなそうで、私を見ては安心したように笑う兄さんが、私の全てと言っても過言ではない。
だから、こんな時まで兄さんを考えるのは。
「…っ、A!」
きっと来てくれると、信じていたからなのかもしれない。
「……先生?」
「兄さん……」
息を切らした兄さんが、居るはずもないこの場所にいた。いつもとは違う、鋭い視線を携えて。
「……思い出しましたよ。君が、あの時の少年だと」
部屋に入ってきた兄さんはそう言って、私の手を握る赤司くんの手を振り払ったのだった。
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堕天使ルイ - なんか、ちょっと内容が分からなくなってきました。自分の理解能力の無さでw 続き楽しみにしてます。更新頑張ってください。応援してます。 (2018年3月20日 21時) (レス) id: 3344530ea6 (このIDを非表示/違反報告)
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