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私は多分、いやきっと、知りたかったんだと思う。
そうでなければ兄さんに黙って、兄さん無しでなんて、こんな場所には来なかっただろうから。
「良く来てくれましたね。俺、あの時からまた会えないかとずっと考えていたんですよ」
そう言って薄い微笑を浮かべ、綺麗な赤色の双眼で私を捉える彼___赤司くん。
「本当に申し訳ないなって、思ってはいるんだけど……」
「申し訳ない?如何してですか?……あぁ、俺が先生のファンだと言ったのに、Aさん一人だけで来たことですか?」
「……まぁ、そう、ですね」
「気にしなくて良いんですよ。俺、言ったじゃないですか。あなたに会いたかったって。……そう言えばあれから、何か思い出したりしましたか?」
「え?い、いや、何も……。と言うか、思い出すって、何を……」
「……そうですか。いえ、大丈夫ですよ。それで……俺に、何の用件が?」
そう言った彼の言葉にハッとなって、私が此処に来た理由を思い出す。
「……赤司くんに、聞きたいことがあって来たんです」
「良いですよ。俺に答えられることなら、何でも聞いてください」
彼の言葉に促されるように、私は小さく頷いてから話し出した。
「実は……赤司くんに会ってから、兄さんの様子が可笑しいんです」
「先生の様子が?」
「……夢に魘されてて。昨日も、一昨日も、その前も……ずっとです。夢の内容はいつも教えてくれなくて」
「……そうですか」
「だから昨日言ったんです。赤司くんに会ってから、兄さんはずっと疲れてるみたいだって。そしたら、何かあるみたいに含みを持たせた事を言ったから……」
私がそう言うと、赤司くんは少し驚いたような表情を浮かべた。
「……そう、ですか。もしかすると、先生は小さい頃に何か……トラウマじみた思い出があるのかもしれませんね。ほら、俺は中学生ですし。俺を見て、何かを思い出して、それを夢に見ているのかもしれないですよ」
赤司くんは「……まぁ、ただの推測ですが」と付け足して、暫く黙り込んだ。
そう言えば、考えたことが無かった。『昔のこと』なんて。
そんな思いから少しだけ、記憶を遡る。
高校の時、中学の時、小学6年の時、小学……。
そして気づく。
「……あれ?私……、」
一定の年まで記憶を遡ると、それより前のことは、まるで最初から無いみたいに、一つも思い出せないことに。
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堕天使ルイ - なんか、ちょっと内容が分からなくなってきました。自分の理解能力の無さでw 続き楽しみにしてます。更新頑張ってください。応援してます。 (2018年3月20日 21時) (レス) id: 3344530ea6 (このIDを非表示/違反報告)
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