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01:Gelb Geranie ページ1

朝っぱらから「海に人形が落ちてるぞ先生!」なんて街の人からの大声で叩き起された阿部は、近くの海岸にまで足を運んでいた。

阿部「うーん…これは…」
砂まみれになって海岸に打ち上げられていた機械人形は、ここ数年では珍しいゼンマイ式の旧式のもので。
しかもゼンマイが入るであろう所にその姿はなく、ポッカリと穴が開いたまま。
穴の隣に掠れた「S-」なんていう文字が垣間見えていた。これは…何だ、0と…6か8か。とにかく数字だろう。
まあそれはいい。
ズレたモノクルを上げて、近くにゼンマイが落ちていないか探してみるもやはり見当たらない。
海のもずくとなってしまったのだろうか。

阿部「旧式って事はゼンマイがないと動かないって事でしょ…?…うーん…」
代わりのゼンマイを作れば動いてくれるだろうか。
なんて思考を巡らしていると、突如として目の前の機械人形が動きにくそうに起動を始めたものだから。
阿部「えっ、えっ!?ゼンマイなくても動くの!?」
思わずそんな素っ頓狂な声を出してしまった。

ギギ、という機械的な関節の音と共に開かれた互い違いの浅紅と新緑の目が自分の方を覗く。
キョトン、とこちらを見やる機械人形に、阿部は呆然としたまま近付いた。
阿部「…君、旧式なのにゼンマイなくても動くの…?」
「…」
阿部「えっと…知能機能は備わってるのかな…」
「ますたぁ!」
阿部「うわっ、びっくりした」
「さくまノ、あたらシイますたぁ?」
阿部「さくま…?それ、君の名前?」
「さくまのなまエ!」

えらく人懐こいその機械人形に、「マスター」なんて呼ばれた阿部は少し思慮して1つの考えに行き着いた。
ゼンマイがなくても動く、ゼンマイ式の旧式機械人形…とても気になる!是非とも研究したい!
ならば選択肢は1つしか無かった。
阿部「…そう、俺が今日から君のマスター、阿部亮平だよ。よろしく」
「あべちゃん…ますたぁ!」
阿部「人懐こいな…」

どうやら海水が入っているせいでまともに動けない様子の「さくま」を持ち上げようとして、思わず呻き声があがった。
「…ますたぁ?」
阿部「おもた…流石旧式……」
日頃工房にこもって研究ばかりしている阿部には、人と大して…いやそれ以上あるかもしれない旧式の機械人形は重すぎたのだ。
さて、どうしたものか。

「あれ?あべちゃんじゃん」
救世主とも言えよう聞き覚えのある声が聞こえたのはその時であった。

*→



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milkmilkmilk723(プロフ) - 最近このお話を見るために占ツク開いてます!更新応援してます、コロナで騒がれていますがお身体ご自愛ください! (2020年4月8日 21時) (レス) id: 2c3c24b282 (このIDを非表示/違反報告)
I-RISA(プロフ) - Twitterも拝見致しました!お話し繋がってるんですね!続きがとても楽しみです! (2020年4月8日 16時) (レス) id: 52da8c48f6 (このIDを非表示/違反報告)
パスタ好きのさらさん(プロフ) - 湊都さんのお話、面白くて全種類読ませてもらってます!最近の更新で、あれ、もしかしてこれ軍パロの時の繋ぎ…?という期待が膨らみつつあります笑 面白いです、更新応援してます! (2020年4月3日 16時) (レス) id: b898e8ff1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:湊都 | 作成日時:2020年3月30日 18時

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