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「なあ、名前は」
「……名乗るとでも?」
考えられるのは収容違反を起こしたアブノーマリティの侵入か未収容のアブノーマリティの侵入の2択。
いずれにせよ詳細が不明な以上名乗ることは出来ない。
「じゃあええわ……いや良くない、か?」
彼自身に混乱と僅かな苛立ちが見られた。
もどかしさのやり場を探しているのか落ち着きなく手を動かしているが、結局頬を搔く所に落ち着いたらしい。
.「俺、"シャオロン"って言うねん」
「……そうか、アブノーマリティか?」
「こっちが名乗ったんやぞ、お前も名乗れや」
微妙に会話が成立しない、というか"シャオロン"の望むように喋らせたい思いが強すぎる。
彼が求めているのはランダム性のある会話ではなく、呼びかけに答えるだけの応答だ。
しかしここで会話を打ち切るのも危険であり、また情報収集の観点からも続ける以外の選択肢はない。
「Aだ。再度聞くが、お前はアブノーマリティか?」
「Aな。……せやで、アンタら職員が……何やっけ、余計な……何とかって呼ぶヤツや」
「「余計な一言」か?」
それそれ、と気だるげに答えるシャオロン。
「余計な一言」は間違いなくツール型で、付属する人型の話なんてひとつも出てきていなかった。
だが彼は職員が己のことを「余計な一言」と呼称していたことを知っている。
外部からの侵入はもちろん収容違反アブノーマリティにもなかなか知りえない情報をピンポイントに知っているというなら、もはや疑う余地などない。
「Aは何でこの会社に来たん?」
「翼に入れば安泰だからな」
「……その怯えようじゃ、安泰とか説得力無さすぎるわ」
「その日の食事と寝床に不自由しない。十分に安定しているさ」
「不自由したことがあるん?」
「外郭出身だからな」
「奇遇やな、俺もやで」
思わずジト目で彼を見つめてしまった。
お前達アブノーマリティから身を守るために都市を作ったのに、外郭以外出身のアブノーマリティがいてたまるか。
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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:志摩 | 作成日時:2019年7月11日 0時