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収容室の扉を開けば、真ん中に置かれた粗末なテーブルの上にぽつんとシャベルが置かれていた。
近寄ってよく観察してみるが、ほんの少し土で汚れていたり錆が浮いている以外は何の変哲もないシャベルである。
触れても持ち上げても何も起こらない。
手袋を取って素肌で触っても、もちろん体温や鼓動は感じられない。
刃のカーブに沿って指を這わせてみるが、刀や剣と違って私の指が傷つくことは無い。
｢何しとん｣
｢……っ、は！？｣
咄嗟にシャベルの柄を握って背後に振りかぶったが、渾身の一撃はいとも容易く受け止められてしまった。
刃の部分を掴まれて、引くことも押すことも叶わない。
仕方なくシャベルから手を離して距離を取り、ホルスターからピストルを抜いて構える。
｢雑魚乙。……何しとん、って聞いてるんやけど｣
手馴れたようにシャベルを肩に担ぎあげる青年。
こちらに敵意は無いようだが、別段興味を持っているわけでもなさそうだ。
これがメインルームなどであれば無視をしたものの、ここは｢余計な一言｣の収容室内だ。
私は1人で作業をしに来たし、｢余計な一言｣はツール型であるが故に人の姿をしていない。
つまり、目の前に立つこの青年がどこから来たのか分からない。
｢……清掃作業に、来た。作業にはツール型アブノーマリティの手入れも含まれる｣
何者かは分からないが、超常の存在であることは間違いない。
彼の正体を暴くためには会話を続けるのがおよそ効率的だと判断した。
｢へえ｣
だと言うのにこの反応である。
頗る他の存在に興味の無さそうな顔をして、何の意思も見い出せない暗い瞳をしている。
彼は担いでいたシャベルを雑にテーブルに投げ捨てた。
衝撃で少しテーブルが傷ついて歪み、テーブル上で止まりきれずけたたましい音を立てて床に落ちた。
｢っ、何者だ｣
流石に耳障りだったのか僅かに顔を歪めたが、それだけだ。
オーバーオールのポケットに手を突っ込んでゆらゆらとこちらに歩み寄ってくる。
威嚇射撃にも面倒くさそうに口を歪めるだけ、まるで｢余計な一言｣のように反応が見られない。
｢……何や、"ロボロ"の目かこれ｣
無遠慮に距離を詰めてくるようなことは無く、極めて紳士的な距離感で彼は立ち止まった。
無感情なままじっと私を見つめた後に言い放ったのが先の発言である。
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志摩(プロフ) - H2Oさん» H2Oさん、閲覧ありがとうございます。アブノーマリティの設定はめちゃくちゃ悩んだので褒めて頂けて嬉しいです。更新頑張ります。 (2019年7月16日 8時) (
レス) id: 4b0ab5b92a (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - コメント失礼します。このパロディとても好きです。待っていました。各アブノーマリティの設定も凝っていて、読んでいて世界観に飲み込まれました。これからの更新楽しみにしております。 (2019年7月16日 7時) (レス) id: e433076a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年7月11日 0時
