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夜景が描写してるみたいだ。
あれから私は攫われたみたいに坂田さんに運ばれてしまった。そして抵抗虚しく、現在大人しく坂田さんが運転する車に揺られている。
右隣の坂田さんを盗み見ても、全く悪びれた様子もない。微塵も感じられない。
それにイラッときて繋がれている右手を強く握り返しても、坂田さんは涼しい顔だったので余計にむかついた。
「なんなんどしたん雅ちゃん。ご機嫌斜めやんね」
ええお陰様で。本当はそう言ってやりたかったけど、こんなこと言ったら余計に坂田さんはウザくなると学習しているのであえて無視しておくことにした。
「あらっ無視ですかー。えーん僕悲しい、泣いちゃう」
しくしくと泣き真似をする坂田さんが、どうしても可愛く見えてしまう私って最早末期なのだろうか。それと普段僕って言わないくせに、こういう時だけ言うのがとてつもなくあざとい。
そしてまたそこも計算しているというのが余計にあざとい。
くそぅ末っ子め。
えーん、と泣き真似を続ける坂田さんに(頭)大丈夫ですか?と声を掛けたくなったが、そこはぐっと堪えた。
なんかここで坂田さんに声を掛けたら、負けのように感じてしまったからだ。
だからこの後も、私の注意を引くようなことをしてくる坂田さんをことごとく無視した。
時間が経つにつれて段々と手を握る強さが弱まってきてが、ここで声を掛けるわけにはいけない。
坂田さんには反省してもらわねば......!
よしっと意気込んで、坂田さんと握っていた手を離そうと手を引いた。するっと抜けていく手が、どこかなめかましい。
と、半分くらい引き抜いた手が一気に戻され握り返された。
「いっ、」
「なぁ......何で無視するん?」
馬鹿力か。
そう叫びたい程、坂田さんの力は強かった。でも目の前の紅色の瞳に捕らえられてしまって、何も言えなくなってしまった。
フロントガラスを見てみても信号機は赤で、さらに運が悪いことにここの信号は変わるまでに時間がかかる。
前の坂田さんを見ると、明らかに怒っていてこれは落ち着くのに時間がかかりそうだった。
「あー。もしかしてさっきの?そらるさんのこと怒ってるん?」
「雅好きやもんね、そらるさんのこと」
「本当は今頃俺やなくてそらるさんの車に乗っとったかもしれんもんね」
「あぁ......そらるさんに捕られるんやったら、俺にしかしっぽ振らんように首輪でも付けとこか」
と言うと坂田さんは私の首元に顔を埋めた。
香るバニラが胸焼けするほど甘い。
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ちょこ - この作品好きです!続き楽しみに待ってます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
loss(プロフ) - 関西風しらすぅ@坂田家さん» ありがとうございます。オメガバースからいらっしゃいませ。センラさんの見え隠れする独占欲最高ですよね。こちらでも、コメントありがとうございます! (2019年8月14日 16時) (レス) id: 1be552adc4 (このIDを非表示/違反報告)
関西風しらすぅ@坂田家 - うはぁ、好きです。オメガバースから来ました……。センラさんの独占欲可愛いなぁ。惚れました!!!!いつまでも着いていきます!!!! (2019年8月13日 0時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
loss(プロフ) - 雨上がりのcrewさん» ありがとうございます!更新も頑張りますので、これからもよろしくお願いします。コメントありがとうございました! (2019年8月12日 14時) (レス) id: 1be552adc4 (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すっごい好きです!!これからも更新頑張ってください!! (2019年8月11日 11時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
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