【おそ松さん】本物のおフランス帰り

おいで ページ14

「お前はあんまり泣かないからな…俺たち兄の前ではさ」


　


　


　


やめてよ、泣いていいって言わないで。


　


全部吐き出しちゃいそうじゃん。


　


　


　


「フランスに行ってる間も、我慢してたんじゃないか？」


　


『…』


　


　


　


窓の外を見ていた私の視線を兄さんへゆっくりと。


　


彼はソファから降りていた。


　


　


　


「…ほら、もういいんだぞ」


　


　


　


両手を広げて“おいで”って言ってるみたい。


　


それを見たら、もう堪えきれなくて。


　


兄さんの腕に倒れ込むように、私の体は崩れていく。


　


　


　


『っ、ぅ……にい、さ…』


　


　


　


あまり情けない声は出したくなくて。


　


押し殺すような泣き声。


　


それでも涙は止まってくれない。


　


　


　


「よしよし、どうしたんだ？」


　


　


　


受け入れてくれた兄さんは心地よい力加減で私の体をぎゅーっとしてくれた。


　


心もきゅっと掴まれたような気がして、自然と思っていたことが口から出ていく。


　


　


　


『わ、たし…帰ってくるの、怖かった…』


　


　


　


“帰らないと思う”


　


日本を離れる前に私はそう言って、六人の元からいなくなった。


　


その時は兄さんたちのニートっぷりにイライラしてて。


　


二度と帰ってこないと悟ったのか、みんなは少なからずショックを受けていた。


　


妹離れしてさっさと就職しやがれ。


　


そんな感じでざまぁ見ろなんて思ってた。


　


でも離れて寂しくなったのは私の方。


　


私の方こそ兄離れしてないって自覚した。


　


でも帰れないかもしれないというのは嘘じゃなかったから。


　


だから、こういうことになって、帰るのが怖いと思った。

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