拗らせ恋。【登坂広臣】１ (ページ26)

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. hiroomi side

男が立ち去ったのを見届けると、彼女はサイレンの音を止めた。

「ふふん、携帯で鳴らしてたの。気をつけてね、夜道に1人は危ないよ」

そう優しく声をかけると、女の子は泣きながらありがとうと何度もお礼を言っていた。

その後彼女は傘を女の子に貸し、並んで道を歩いていった。

すれ違いざま、ほんの数分の出来事なのに、俺は彼女から目が離せなかった。

彼女が神代Aだと気づいてから、俺は" クール "なんて印象は微塵もなくなっていた。

-

「臣、最近その子好きだね」

「え、いや別に好きなわけじゃないっすよ」

ニヤニヤしながらスマホを覗き込んでくる直人さん。

ちょうど彼女のインスタを見ていたところだった。

「ほぉ〜んとかな〜」

「うっわー、ニヤニヤしてるー」

お調子者の直人さんは、俺がだれかを好きになるのを今か今かと待っている。

それもそのはず。

美奈子のことがあってから。

-

別れを告げられてからも、俺は美奈子との連絡を絶たなかった。

また美奈子も、俺からの連絡を拒まなかった。

そんな曖昧な関係は、所謂セフレというものになっていった。

「私、やっぱり広臣のこと好き」

「そー...っか」

美奈子がそんなことを言い出したとき、俺はもうAのことで頭がいっぱいだった。