窮鼠なれど王を噛めーその30 ページ24
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「…あれ以来、お前に関わるのが怖かった。最初に感じた物とは違う恐怖を感じたんだ。
だから、お前と関わるのは家を継いでからでいいと思っていた。歳を食って、家を継いで、心理的に対応ができる状態になってから他人行儀に付き合っていけばいいと思っていた。
だが、この合宿で見るお前の姿に昔の面影は一つとしてなかった。
俺はそれが信じられなくて、お前を目で追っていたんだ。
それで、お前を変えたのは恐らく立海の奴らなんだろうなと思った。
…俺は、それが羨ましかったんだ。
会うきっかけが違えば、俺もああなれたかもしれないと思った。」
跡部様の目が、じっと俺を見ている。
その瞳を見ていると、汗が滲むような真夏の蒸し暑さも忘れてしまいそうだ。
引き込まれるような青から逃げられずにいると、そっと両肩に手を添えられた。
見つめたままの瞳が言い難そうに細められて、またきらりと光る。
「……今更遅いとは分かっているんだ。
だが、これ以上の機会なんてもう来ないかもしれねぇ。
俺は、今からでもお前の兄になれるか?」
兄に。
そんなこと、跡部様から言われるなんて。
嫌われていると思っていた事も上乗せされて、嬉しさが込み上げる。
でも、
(こんな言い方、跡部様に似合ってない。)
目の前で乞う様な目をする跡部様を見て、ふとそう思い俺は思わず跡部様のジャージの袖を掴んで声を上げた。
「っ命令、してください」
「は、?」
「そんな言い方、あなたには似合わない。
……って、跡部様の事をよく知っている人ならそう言うのではないかと思いまして…」
俺の言葉を聞いて、跡部様は目を瞬かせる。
何かを考えるように眉間に皺を寄せてから数秒して、
「言ってくれるじゃねぇか。」
と言って笑い、そうだな、と呟くと肩に置く手に少し力を込めてニヤリとした。
「なら命令だ。
お前、俺様の弟になれ。」
ああ、こちらの方がこの人に相応しい。
俺はにっと笑って頷いた。
「喜んで!」
「よし、いい返事だ。」
「っ、うわ!?」
俺が返事をした瞬間、跡部様の腕の中に引きずり込まれた。
跡部様は抱え込むように腕を回し、頭を撫でつつ軽く笑って言った。
「俺様にはこっちのやり方の方があってんな。
…ああ、やっとこれで
お前の、兄になれる。」
そう言った跡部様は、ふわりと目を細めた。
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木こりのコロポ(プロフ) - 日吉和菓子2円さん» コメントありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2018年4月30日 0時) (レス) id: 43368e3037 (このIDを非表示/違反報告)
日吉和菓子2円 - ルドルフ組が可愛かったです! (2018年4月29日 22時) (レス) id: 9521c565b3 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» コメントありがとうございます!ルドルフの中だと淳が好きなので、かなり淳との会話が多くなってしまったかなと思います…!お気に召して貰えたならなによりです! (2018年4月29日 19時) (レス) id: 43368e3037 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - ルドルフかわいかったです!家族設定面白い!ありがとうございました! (2018年4月29日 18時) (レス) id: 91bd124fa4 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - 暁月さん» ご指摘ありがとうございます!訂正しました! (2018年4月29日 13時) (レス) id: 43368e3037 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木こりのコロポ | 作成日時:2018年4月14日 8時