第8話 ページ8
やった！これで一つ前進したね！と自分の事のように喜ぶInk。これが自分の感情を引き出してくれる代物。嬉しくもあり、悲しくもあった。これが無ければ空っぽになってしまうのだから。
「この調子で頑張ろう！」
「……ああ、そうだな。」
あ！とまた彼が大声を出す。Pokerはまたかと、呆れる。どうやらInkは酷く忘れっぽい体質らしい。用事があるのを思い出したと言って、ぶらぶらしてていいから、待ってて！と言い残すように、インクとなって消えていった。その場には、黒いインクの水溜まりだけが残った。
「ぶらぶらしてていいからって……。」
干渉しないでと言っていたのはどうした、と突っ込みたかったが既に本人はおらず、どうしていいかわからなかった。
「あれ？兄ちゃん、こんなところで何してるの？」
突然声をかけられ、びっくりして振り返ると、そこには自分よりも背の高いスケルトンがいた。ソウルなんてないのに、鼓動が早くなった気がした。Pokerは彼のことを知っているような気がしたのだ。
「あ！もしかして別世界の兄ちゃんか！ごめんね、勘違いしてしまったようだ。」
兄ちゃんとは、オリジナルの事だろう。もしかしたら、自分にも彼のような兄弟が居たのかもしれない。そう出なければ、こんなに心乱されるはずがない。
「オレ様は偉大なるPapyrus様だ！宜しくな！」
「僕、は……。」
関わるなと言われていたのに、名乗っていいものかと躊躇する。そこへSansがやってきた。
「よぉ、兄弟。ん？あーまだ居たのか、お前さん。Inkはどうした？」
PokerはInkは用事があると言って消えてしまったことを話した。Sansは呆れたように、あーあそこか、と勝手に納得していた。
「知ってるのか？」
「惚気話でな。ま、友人の話だが。」
なんの事かわからず、首を傾げるPoker。Sansはまあ、気にする必要は無いと言った。そしておいてけぼりにされた彼に提案もしてくれた。
「良かったらグリルビーズに行かないか？奢るぜ。」
「もう！そうやってまたツケにする気でしょ！？」
……賑やかなテンションについていけない。感情があってもこんなに戸惑うものだろうか？きっと違う。記憶が無いから、どう接していいかわからないんだと、悲しくなった。
「……ツケはダメだけど、彼を連れていくのは賛成だ！」
「え？」
「ここにいてもつまらないだろう！行こう！」
「あ、ああ。」
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作者名：あゆさ | 作成日時：2021年7月16日 19時
