第7話 ページ7
帽子から次々とお菓子が溢れてくる。それを子供たちにわけ、質問をはぐらかしていた。彼は子供たちの無邪気な笑顔を見て、楽しそうにしていた。
あんな顔も出来たんだ、とInkは思わず見とれてしまう。ずっとムスッとしていたり、悲しそうだったり、暗かった彼が笑っている。
その雰囲気を壊すのが申し訳なくて、しばらく様子を見ていた。子供たちに手を振り、見送った彼はInkに気付く。表情は一変し、ムスッとした顔に戻る。
「おい、遅いぞ。どこ行ってたんだ？」
「あーあはは……知り合いに引きずり込まれちゃって。」
自分にもあんな笑顔を見せてくれてもいいじゃないかと、彼と同じようにムスッとしてしまいそうになりながらも、Inkは笑ってそう答えた。
「それにしても、君、マジックが上手いんだね。」
「え？ああ……なんでだろうな。何となくやったら出来た。」
いや、なんとなくで出来るわけないだろうと、思わず突っ込みたくなるInk。しかし、彼自身もそれはわかっているようだった。おそらく、記憶を失う前の自分がやっていたのだろう。実際にやってみたら出来てしまった。最初は頭で理解していなかったものの、やって見て理屈を思い出した。
「器用なもんだな。」
「あ！そうだ！」
突然Inkが大声を出す。驚いて肩が揺れる。彼は訝しげにInkを見る。また突拍子もないことを思いついたんだろうかと心配しているのだ。
「君の名前は、Poker。ね？どう！良くない！？」
マジック＝ポーカーって安直すぎないかとも思ったが、響きが嫌いではなかったので了承した。Pokerは改めて自分の名前を名乗る。
「Poker……僕は、Pokerだ。」
うんうんと、嬉しそうに頷くInk。すると、Inkはなにかに気付く。Pokerの足元に落ちているものを拾い、よく観察する。
「虹色の、飴？」
水晶のように光を当てるところを変えると、様々な色に変わった。赤、オレンジ、黄色、緑、水色、青、紫。見覚えのある色にInkはもしかして、と推理する。
「これ、君のインク代わりじゃない！？」
創造者がくれたに違いない！と彼は嬉しそうに笑う。Inkの言っていた創造者については分からないが、この飴がそうだというなら、何故当然現れたのだろう。
「きっとマジックだよ！人々を楽しませることでこの飴が出来上がるんだ！」
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作者名：あゆさ | 作成日時：2021年7月16日 19時
