第35話 ページ35
「ほんと！？やったぁぁ！！Miraありがとう！！」
さっきの表情はどこへ行ったのやら、Inkは笑って、Miraに抱きつこうとする。彼女はInkのハグを軽やかに避けた。
「感謝は受け取っておく。でも、忙しいって言ったでしょ？観光してていいから、今日はこれでおしまい。」
「えぇ……折角来たのに。」
ニコッと彼女はPokerたちに笑いかけ、迎えに来たと思われるニンゲンの車に乗って行ってしまった。
「Willeは行かないの？」
「……お前らの監視だ。下手な事したら殺す。」
「ええ、物騒だな。」
「うるせぇ。」
どうやらWilleは、Pokerの事だけが嫌いなわけじゃないらしい。彼はこの世界に来る客人が嫌いなのだ。
「まあ、この際だ。この街を観てまわろう？Poker、行きたいところある？」
「……あ、じゃあ、さっきのショーのところ。」
「ショー？」
Pokerの代わりにWilleが説明をする。一般人を巻き込まないようにするため、Metatonにショーを開いてもらい、ある会場でパフォーマンスをしているらしい。
「フェスみたいなもんだ。Metaton独壇場だとあれだから、ニンゲンたちのパフォーマーもいる。」
「そこに行きたいんだ！わかった！」
InkとPokerは隣同士で歩く中、Willeは二、三歩後ろからついてくる。本当に監視としてついてくる気らしい。Inkは何も言わないが、Pokerからしてみれば、居心地が悪くて仕方がなかった。
一方、車の中でMiraは浮かない顔を浮かべており、見かねた運転手の女性に話しかけられる。
「どうかなさいましたか？」
ハッと意識を戻し、なんでもないと笑って誤魔化した。しかし、Miraの性格を知ってる彼女は引かない。せめてもの忠告を促していた。
「御家族、ご友人が心配されますから。抱え込みすぎるのは止めてくださいね。」
「……わかっていますよ。ねぇ、貴方から見てWilleは＿＿＿＿。」
「Willeがどうかしました？」
「…………ごめんなさい。何を聞きたいか忘れてしまいました。」
嘘だ。本当は聞きたいことがあった。けれど、彼女に話したところで何も変わらない。自ら色々動いてはいるものの、WilleのMiraへの執着は強過ぎて、薄れないのだ。
「(私ばかりに固執してたら、またWilleは大事なものを失いかねない。)」
そしてイレギュラーな存在、Poker。Miraは思わず泣きたくなってしまう。彼女は知っていた。彼の正体を。
「FAtale……か。」
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作者名：あゆさ | 作成日時：2021年7月16日 19時
