第23話 ページ23
「それじゃあ、今日はもうこの辺にしておこうか。」
「そうだな。Andainの相手でもうクタクタだ。」
「いやー相変わらず無茶苦茶だよ。ほんと。」
＊
「あのね、この世界に、私の恋人がいたの。」
それはとんでもない告白だった。Dreamは必死に平静を装う。ずっと、大好きだった人。憧れていた人。その人の好きな人の話なんて聞きたくなかった。しかも、恋人だなんて。
「彼はマジックが得意で、沢山のモンスター達を楽しませて、笑顔にしていたんだ。」
嬉しそうに、楽しそうに、恋人の話をする。これは敵わないなとDreamは肩をすくめる。
心が痛いのを誤魔化して、Friskの話を聞いていた。
「……ねぇ、その彼は何処にいるのかな？」
こんな酷なことを聞くのはどうかと思ったが、見てみたかったのだ。彼女の好きな人を。Friskの輝いていた瞳が濁る。
「ご、ごめん！そんなこと言いずらいよね！」
「…………彼は生きてるよ。」
「＿＿＿＿＿え？」
自分の力が暴走してしまった時に、最後の力を振り絞り、なんとか、その人だけ別の世界に飛ばしたのだと彼女は言った。生きていて欲しかった。夢を叶えて欲しかった。ただそれだけの事だった。
「その時……視てしまったの。」
その人の辿る未来を。最悪な結末を。最低な結末を。彼女は顔を覆う。ミキミキと彼女の足を這うように草木は伸びてくる。DreamはFriskを抱き締めた。
「Dream……っ？」
「…………っ、大丈夫、だよ。それはただの未来視だよね。なら、変えられるよ。大丈夫、だから。」
Friskには未来を視る力がある。そのほとんどがその未来を辿っている。Nightmareの身に大変なことが起こると言ったのも彼女だった。
だから、傍にいてほしいと、決して離れないで欲しいと言っていた。その時のDreamは信じていなかった。だって、誰よりも、自分たち兄弟が仲良しだと信じていたから。離れ離れになるわけないと思っていたから。
しかし、いまはどうだろう？彼女の言ってることが本当に訪れる日が来るのだと思うと、胸が痛くて堪らない。彼女は誰かの運命を勝手に背負ってしまう。Dreamにはそれが耐えられなかった。
「……彼は、いつかここに来る。彼は私を審判して、そして裁くの。」
「それって＿＿！」
Friskは人差し指をDreamの口に当てる。何も言わないで、と涙目で訴えかけられる。Dreamはただ胸が締め付けられるだけ。なんで、何もさせてくれないんだよ。涙が浮かび上がる。
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作者名：あゆさ | 作成日時：2021年7月16日 19時
