第3話 ページ3
「例えば、そうだな。」
Inkは近くにあった紙をとり、こちらに見せる。【Underswap】という文字が書かれている。薄らとだがその世界の様子が見えた。ニンゲンとモンスターが共存する世界。
「これは幸せな時間軸を辿った世界。そしてこれは＿＿【Dusttale】。【Underswap】とは真逆……不幸な時間軸。」
モンスターがいない世界。ただひたすら、一人のニンゲンと一人のスケルトンが殺し合う世界。
ここにある紙、一枚一枚が世界であることに驚きを隠せなかった。Inkは先程、オリジナルの世界から派生させられてる世界と言っていた。なら、オリジナルの世界はどれなのだろうか？
「オリジナルの世界はこれ。」
【Undertale】の世界も、【Underswap】と同じように、ニンゲンと共存している世界だった。そこには"Sans"がいた。
どの世界にも同じような人物がいるらしい。つまり、オリジナルの世界のSansが居るということは、自分は他のAU世界のスケルトンということになる。
「Inkも、そうなんだよな？なんで、Inkって名乗ってるんだ？」
「その方がわかりやすいでしょ？それぞれAU内で呼び方があるんだ。」
とても信じられない事実だったが、信じる他なかった。彼は立ち上がり、紙を一枚、また一枚と確認する。
「違う。これも違う。」
ひとつひとつ、確認するも自分の世界は見当たらない。名前なんてわからない。とにかく"Sans"のいない世界を探した。
しかし、数が多すぎる。一人でこれらを確認するのは無理があった。だが諦める訳にもいかない。家族が、友が、待っている。きっと心配している。ソウルがなくても、帰りを待ってくれているはずだ。
「……君、もしかして迷子？世界に弾かれちゃったの？」
「わからない。」
答えられない。答えがない。ヒントすらない。帰りたい。帰りたい。帰りたい。その思いだけが彼を突き動かす。
「……その体じゃ不便でしょ？これ飲む？」
Inkは瓶をこちらに渡す。中身はよくわからない液体。色々混ぜたのか真っ黒になっていた。こんなものを飲めとはどういう拷問だ。「いいから、試しに飲んでみなよ。」と押し付けられる。
気は進まないが、彼には色々と教えて貰った。なら、信じて飲んでみようと決意する。口に当てて、一瞬躊躇ったが、一気に飲み干した。なんとも言えない味で半分吹いてしまったが。
「なんだこれ！すごくまずっ……。あ、れ？」
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作者名：あゆさ | 作成日時：2021年7月16日 19時
