FATALE (ページ19)

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第19話ページ19

未だにAsgoaへの当たりは強いものの、以前より、言葉の表現が柔らかくなった。少しずつ、この日常を受け入れつつあるのだ。

「ママ！パイも焼きあがったみたいだよ！」

オーブンを見つめていたAsrielがそう声を上げた。嬉しそうに駆け寄ってきて、オーブンからパイを取り出すため、手袋を取りに行く。

あまりに急ぐものだから、心配になったTorielは慌ててAsrielの元へ駆けつける。その時、机にぶつかってしまい、倒れそうになる。Asgoaは彼女の腕を掴み、何とか怪我を免れたが、パリーンと大きな音が響いた。

「あら！どうしましょう！Miraのカップが……。」

机にぶつかった衝撃で、端に置いていたMiraのマグカップを落としてしまった。床にはお茶がこぼれ、マグカップの破片が散らばっている。大きな音を聞いて、Frisk、Charaも駆けつける。

「私がやるよ。怪我をしたら大変だろう。子供たちも近付いてはいけないよ。」

「……ごめんさい。お願いするわ。Asriel、Chara、Frisk、先に椅子に座って待っていて？」

三人は顔を合わせたあと、頷いて、大人しくリビングの方へ向かった。Asrielが今にも泣きそうなのでCharaが喝を入れるために、背中を思いっきり叩く。

「いたっ！！何するの！？Chara！」

「お前のせいじゃない。誰にだってある失敗だ。」

思いもしない励まし方にAsrielはポカーンとする。いつもならからかってくると言うのに。Charaは気にする様子もなく、先にリビングに戻って行った。FriskとAsrielは顔を見合わせる。

「なんか最近柔らかくなったよね、Chara。」

「やっぱりMiraの影響かな？」

「大人びてきた感じがするよね。」

きっとそれは喜ぶべきことなのだろうが、二人にとってはなんだか、Charaが先に行ってしまったように思えて少し落ち着かなかった。

「(Mira姉さんのマグカップが割れた。)」

前にも同じようなことがあった。マグカップではないが、彼女がよく使っていた皿をFriskが手を滑らせ、落としてしまった。Miraは気にする様子などなく、Friskに怪我がないか心配していた。

それはいい。けど、そういう時に限って良くない事が起こる。あの日、Mira姉さんは一部のニンゲン達に襲われそうになった。近くにいたSansたちが助けてくれたから、怪我一つなかったが。

「(何かの前触れなような気がする。)」

気にし過ぎなのかもしれないが、Charaにとっては、大きな可能性として残った。